第3章ブロウアーティストの価値向上
「美容には、人を救う力がある。
感謝されるブロウアーティストを世に送り出したい」
美容業界に関して、課題に感じていることはありますか?
まずは結婚や妊娠、出産を経ると働き続けることができない人が多い点。やはり1対1の施術が多いので、子どもの熱が出たからといってすぐに帰るという選択がしづらいですよね。でも時短勤務となると思うほど稼げない。だから辞めてしまう。休眠美容師さんも、いっぱいいます。そういう方たちに向けて、ブロウアーティストという選択肢や、自宅で開業するチャンスを与えることができるのが、「ハリウッドブロウリフト」の技術だと考えています。
また、美容業界は消耗品に対するリテラシーが低いことも課題に感じています。眉毛のワックスを扱うサロンにしても美容師さんにしても、グローブを使うけれどラテックスアレルギーや手荒れのせいで働くことを断念する人は少なくありません。そこで私たちは、手荒れしない医療用のグローブを見つけ出して美容サロン向けに販売を始めました。サロンの方は、お客さまの髪やまつげによい商材を使うことには積極的でも、自分たち施術者が使うものはあまり気にしていないのでは?だけど、手を守ることは美容職人生を守ること。よいものを使って、長く働ける業界にしていきたいです。
福井さんは(一社)ジャパンアイブロウ協会の理事長も務めていらっしゃいます。こちらを立ち上げた経緯は?
ブロウアーティストという職業を支えたい、アイブロウメーカーのみなさんと手を組んでアイブロウ市場を作っていきたい、という想いで協会を設立しました。活動としては開業サポートや経営コンサルを通して私たちの知見を提供したり、あとは女性が長く働ける業界を作りたいので、フェムケアに関する教育・環境づくりも行っています。最近はまずうちの会社で、低用量ピルの補助を福利厚生に取り入れたんです。
「生理痛が苦しいけどお客さまのために休めない」「将来は子どもを産みたいけど不安がある」といったフェムケア分野についても業界として課題が多いと感じていて。みんなで自分の体を大切にしながら長く働いていこうねって、発信していきたいですね。
協会の理事長、「ハリウッドブロウリフト」事業の他に、ご自身のサロンも経営されています。今後、サロンの店舗展開は?
現在は眉毛、まつげ、エステティックのサロンを計14店舗経営しています。眉毛サロンはブロウバーのような、みなさんのお手本になるサロンを今後も展開していきたい。その他のサロンについては「サロンオーナーの気持ちを忘れないメーカーでいるためのもの」と位置付けているため、増やす考えはないけれどやめることもありません。サロンを自ら経営してこそわかるリアルな経験、困りごとってありますよね?そういう気持ちに寄り添って、サロンさんを幸せにできるメーカーでありたいからです。
自分のサロンのスタッフだけなら輝かせることはできるけど、他社さんのスタッフまでとなると難しい。そういう気持ちがベースにあって、「ハリウッドブロウリフト」を立ち上げた時に「これだ!」と思ったんです。
メーカーとしての「ハリウッドブロウリフト」が、目指す未来をお聞かせください。
目標とする未来像は、海外のように眉毛美容の文化が日本に根付くこと。眉毛を何かじゃまなもの…ムダ毛のように切ったり剃ったりするものではなくて、大切な自分のパーツとして扱う文化を育んでいきたい。
眉毛って、納得いかない出来の日も多いんですね。するとこんなに小さなパーツなのに、一日のテンションがすごく下がってしまう。反対に、眉毛がうまくいくと、すごくよい一日のスタートを切れる。そういう「毎朝の成功体験」を叶えるのが私たちの使命。眉毛がキマっていると表情も豊かになるし、眉毛に自信を持つことでコミュニケーション能力も高まると思います。だから眉毛のその先にある、人生を切り拓いていける存在になること、「自分は変われるんだ」という感動体験を、みなさんに広めていくことが目標です。
うわべの利益や事業拡大ではなく、眉毛に対する価値を変えるなど本質的な取り組みを大事にされている姿勢が伝わります。そうした考え方はどこから来るものでしょう。
私自身、コンプレックスがあるためかもしれません。肌質とかいろいろな悩みの中でも、いちばんは髪の毛。くるくるとクセがあって、昔から縮毛矯正やストレートパーマ、髪質改善…と、時間とお金を費やしてきました。本気で悩んでいるので、一瞬だけちょっとよくなるみたいな小手先の対策は意味がなくて。そうではない、解決に導いてくれたプロの方には本当に感謝の気持ちが生まれます。美容にはそういう、人を救う力がある。だから、私もメーカーとして人から感謝されるようなブロウアーティストを、これからもたくさん世に送り出せたらと思っています。
大変失礼ながら、私もそう思っていたことは否めません。
『事業を大きな規模に成長させるまで、表に出てタレントであったことを使ってビジネスはしないと決めていました』とも語ります。
その圧倒的な実績と熱い想いに、不粋な想像は打ち消されました。
眉毛を起点として、美容業界全体に、さらなる旋風を巻き起こすことでしょう。