第3章多角的なコンテンツ
「集客や商売は、“総合格闘技”。
考えられるコンテンツは全部やるべき」
YouTubeを始め、SNSをうまく活用されていますね。
メンズは、「ばれない工夫」が大事なので、その過程を10分とかで詳細に見せることができるYouTubeは有効です。逆にInstagramは1秒・2秒で伝えないといけないので、ビフォー&アフターを見せたいときに向いている。TikTokもやっていますが、現状これらをやっていれば、伝えられないものはないです。
一貫したメッセージでも、伝える方法っていっぱいある。Instagramでも、僕のアカウントと、「RETØUCH」のブランドアカウントでは変わってきます。
「RETØUCH」は当初、有益情報を発信していました。文字を入れて、センターパートの立ち上げ方を説明するような。でもブランドというのは、その世界観に惹かれた人が集まる場所。だから、文字は入れず画のみで、モノとしての価値を伝えるように変えました。
狙ったターゲットに届くよう、緻密に計算されていますね。
今後、あらたに予定されていることはありますか?
以前から親交があったメンズサロン「fifth」の木村 允人さんと、コラボサロンの出店を計画しています。「RETØUCH by fifth」という名前で、美容室とショップが一緒になったサロン。RETØUCHのショップに買い物に来た人が、次は美容室で利用してくれたり、その逆も。お客さまは、自由に商品を試すことができます。僕も週に1回、サロンに立つ予定です。いま渋谷近辺で物件を探しているところで、来年(2024年)前半には出したいなと。
いまの時代は、「可処分時間の奪い合い」と言われています。接触時間が長ければ長いほど、ファン化する。
美容師もそうです。月に1回・1時間をサロンで過ごして、家に帰ったら担当美容師のSNSを見る。その投稿が、まるで自分のこと考えてくれたかのような内容であれば、もうそこにしか行かないし、次に行くのがもっと楽しみになります。
プロダクト・コンテンツ・サロン、この3軸で「身だしなみの文化」をつくっていきたいですね。
今まさに「メンズ美容」が盛り上がりを見せていますが、宮永さんはどのように感じているのでしょう。
楽観視はしていません。女性と同じような世界線になることは、ないと思います。
昨今の韓国ブームで、日本人は「韓国の男性はみんなメイクをしている」とイメージする人も多いですよね。でも、僕は実際に韓国に行って、街を歩いている一般の方に何人も声をかけて聞いてみたんです。そうすると、「芸能人みたいなメイクはしたくない」「ばれないようにナチュラルにしたい」という意見が大多数。韓国でもそうなら、日本もメイクにまで広がるほどにメンズ美容が爆発することはないのかな…と。
なるほど。ちなみに韓国美容については、どのように捉えていますか?
韓国美容というか、「なぜ韓国の文化が世界に広まったか」に興味があります。コンテンツのつくり方が、ファンを熱狂させる仕組みになっていますよね。たとえば、アーティストがデビューするとなったら、それまでの軌跡をすべてドキュメンタリーにしたり。ファンは一緒につくっているワクワク感を味わえて、ロイヤリティが高まります。
YouTubeも、コンテンツを5個くらいつくる。あとは、ミュージックビデオ。ダンス動画も、練習着で定点カメラで撮ったもの・メンバー一人ひとりに焦点をあてたものなど、バージョンがいくつもあります。さらには、グッズも派生させていく。
そういったエンターテイメントに触れているからか、韓国の美容師さんは見せ方がうまいですよね。
集客や商売は、“総合格闘技”。技術がうまい、コンテンツを発信する、お客さまとDMでコミュニケーションをとる、すべて「やって当たり前」のことです。くわえて新規のお客さま・既存のお客さまとで、考えられるコンテンツは全部やるべき。
確かに、宮永さんは「届ける」ことに関して徹底されています。
ちなみに今後、メンズ美容以外での展開は?
別ブランドで、フレグランスやホーム雑貨事業ができたらいいなと思っています。これは、必ずしもメンズだけではなく。
僕らの会社「CiiK」のミッションは、「One Temperature(温度を感じる仕事で、誰かの体温を1℃上げよう。)」身だしなみも、美容室もそう。日常の中でちょっとした贅沢・ワクワク感をつくることができる事業展開を考えています。
宮永さん個人としての構想を教えてください。
僕自身は、派手・目立つ・バズる、といった類は嫌いで…。コソコソやって、最終的にすっごい勝ってる!というのが理想です(笑)。ウサギとカメでいったら、カメ。陰キャっぽいけど、自分の性にはそういうのが合っているのかなと。そのために、今は着々と積み上げる時だと思っています。
数年後、彼はその原宿で人気美容師となる。
ある大きなイベントでのセミナーにて、直前の打合せまで控えめな印象だった宮永さんが、ステージに立った途端、別人のように快活に話す姿が衝撃でした。
本当はズタボロの古着が好きだけれど、「大人男子の身だしなみ」という看板を背負っているので、今のスタイルだとも…。
『ハッタリでもいい。理想の自分を立ち振る舞う』
少年の、あの日の気づき。そうして自信を積み重ねた先に、今の宮永さんがあるのでしょう。