第2章VR教育の利点
「TikTokがこれだけ流行っているのは、
すぐにわかる答えを求めているということ」

現在は3店舗展開。スタッフ数は約60名にも増えた
先ほど、「VRに先行投資をした」とのことでしたが?
青木●“人”がいちばん大事だと考えているので、教育に投資をしようと、VRを使ったシステムを開発しました。小西のカット技術をはじめ、お客さまの案内や掃除の仕方まで…。カットひとつとっても、横で見ているより同じ位置で疑似体験できると、習得が早いんです。
単に「早く一人前になる」というよりは、「普通にやったら4~5年かかるくらい膨大なコンテンツを、4倍の早さで習得できる」というのが特徴です。デビューまでは約3年。早いと1年でデビューするスタッフもいますが、早くデビューしても、しなくてもいいと思っています。個々ができるペースで。
どのようなカリキュラムがあるのでしょうか。
青木●必須カリキュラムは一般的な技術などで、任意はSNS集客・ブランディング・撮影・ヘアメイクなど。自分が目指したい未来に応じて選べます。人事担当が面談やヒアリングをしっかり入れて、一人ひとりに合った教育を構築している。だから、離職も約5%と少ないのだと思います
いわゆるZ世代に、VRはフィットしていると思いますか?
青木●短尺のTikTok(ティックトック)がこれだけ流行っているのは、今の新卒世代は、すぐにわかる答えを求めているということ。わからないことがあっても、先輩や同僚に聞くのが苦手な人も多い。でもVRを観れば、その世界ですべての“正解”がすぐ習得できます。COAに入社が決まった学生さんにも入社前に配布して、自由に観てもらっています。
美容業界の教育課題は、教える人によって教え方やレベルが違うこと。VRであれば、そういったことはありません。なので、このVRの仕組みを全国の美容学生さんにも提供しています。与え続けていかないと、広がっていかないので。うちに入らなくても、全国にあるほかのサロンさんに入った時に即戦力となって、教育コストが下がるきっかけになればうれしいですね。
COAにはスタープレイヤーがたくさんいますが、VR以外にも「教育面」での秘訣があるのでしょうか。
小西●セミナー講師ができるくらいのプレイヤーが、尋常じゃないくらい増えていますね。
これは幹部の髙橋 英昇が考えてくれたのですが、アシスタントにおけるランクの呼び方も工夫しています。たとえばシャンプーであれば、初級・中級とかではなく、「一ツ星・二ツ星・三ツ星」といったように。言い方の違いで何が起きたかというと、「早く三ツ星になりたい!」って、呼び方ひとつでテンションが上がったんです。
青木●幹部は6人いますが、そのようにみんなで意見を出し合います。ことがらによっては、代表の僕らより権限が強いこともあります。そのほうが、すべてにおいて短期間で結果を出しやすい。
小西とも、「幹部がいてくれるおかげで気づけることがあるし、本当にありがたいよね」と、いつも話しています。
お2人の話をうかがっていると、常に「感謝」がありますね。
青木●COAの理念は『仲良く、人のために、感謝の気持ちを忘れない。』というものです。
ありがたいことに、外部の方に、「COAは挨拶がめっちゃいいね」「お礼を言ってくれる」と褒めてもらえることが多いです。悪口やネガティブなことは言わない、「ポジティブしかない空間づくり」を心がけています。
時にはつらいこともあると思うけど、みんなで寄り添って、ちょっとでもそこの負担が減るようにと、全員が徹底しています。
小西●先日、あるアシスタントから「どうして、忙しい時もお客さまに寄り添って、僕らアシスタントの休憩時間を気遣ったりできるんですか?」と聞かれたんです。
それは、美容師になって「人から必要とされることって、こんなにうれしいことなんだ」って、気づいたから。
僕自身は、もともとひきこもりの性格で、ゲームばかりやって中学には半分くらいしか行かなくて。高校にもほとんど行かず、半年で退学してしまいました。青木も20代の頃はなかなかうまくいかず、一時美容師を辞めたり、つらいことを経験したので…。
お客さまに対してだけではなく、スタッフ、タクシーや飲食店の店員さんにも、その人の背景を想像しながら、ありがたいという想いで接しています。
青木●そうだね。この間、小西とクレープを食べたんですけど、「おいしいねぇ」って(笑)。それだけで、うれしい。
小西●偽善者っぽいと言われるかもしれませんが、感謝の気持ちで行動していると、自分自身がいい人になれたような気がするんです。スタッフ間でも、常に「感謝」という言葉が飛び交っていて、理念が浸透しているのを感じますね。