第2章多角的な店舗展開の理由とは
「スタッフこそが大事な“お客さま”。
だから働きやすい環境を用意したい」
2011年創業で、会社もかなり大きくなりました。ここまで順調に進んできましたか?
順調かどうかは捉え方次第でもありますが…。店舗数はマックスの時は80くらいありましたが、現在は60店舗です。それはサロンを統合したり、リブランドしたりと整理して、いまは売上総額よりも利益率を上げようと。ほかにも30坪でオープンしたサロンを150坪に拡大してみたり、逆に小箱にしてみたり、状況に応じてトライ&エラーを繰り返しています。
この「トライ&エラー」の姿勢を僕は大事にしていて、そこから得る学びが多い。仮にエラーだとしても早めに手を打てば、いくらでも修復はできます。
変化すること、新しく始めることは負担が大きくもありますが…。
僕にとって、“変化は楽しみ”。変化したとしても、大事にしてきたことは残りますから。僕自身も変化し続けているし、最近は働き方もだいぶ変わりました。現場のことは、ほとんど本部のマネージャーや店長たちに任せています。
急成長した会社は、ときにマネジメント層が育たずに失速してしまうこともあります。任せられる人材を、どのように育てたのでしょうか?
僕は、育成みたいなものは、それほど得意ではなくて…。周りに能力のある人がいてくれるから、フルで任せられる感じです。任せたら、その結果に応じて対処していく。これもトライ&エラーですよね。人はエラーを体験しないと成長できないから、それをみんなで経験することが大事。
もしかしたら、社長が優秀すぎたり慎重だとそういう経験ができないから、人が成長しないのでは?どんどんやらせてみて、トライする数を重ねていく。社長は、もし失敗したときに「スタッフにどう声をかけるか」だけを意識していればいいのかなと思います。
さまざまなタイプの事業を手掛けていますね。多角経営にした理由は?
いろんな事業といっても、「美容業」で「接客業」という部分は共通しているので、それぞれの相乗効果が狙えます。たとえばドッグサロンはヘアサロンに隣接しているので、ワンちゃんがトリミングしている間に、飼い主さんは隣のヘアサロンでカットすることもできます。ドッグサロンに注目したのは、こう言うと生意気に聞こえてしまうかもしれませんが…トリミングサロン業界の仕組みが、美容業界の10年~15年前を見ているみたいで、改善しがいがあった、というのも理由です。
進化するためには、新しいトライが絶対に必要。普通のヘアサロンだけだったら、僕もスタッフも飽きてしまうと思うんです。そういうスタッフのマインドやニーズに応えるために、さまざまな店舗を展開している面もあります。
タイプによってヘアサロンのブランド名を変えているのは、働くスタッフのニーズを意識した部分も…。「有名な店で働きたい」という人もいれば、「大規模チェーン店ではないレアなブランドのほうがカッコいい」と考える人もいる。だからあえて「LUXBE」とは違う名前の、個人店のようなブランドも用意しています。
業務委託だけではなく正社員雇用も選べる、多様な働き方を用意したのもスタッフのためですか?
そうですね。せっかくうちのスタッフになってくれたのに、「働き方が合わないから辞める」というのは、もったいないですよね。だから間口を広げて、個々のニーズに合った働き方ができるようにしています。サロン業態が増えていったのも同じで、たとえばメンズサロンは、「女性のカットは苦手だけどメンズは得意」というスタッフの声をきっかけに作りました。短所をどうにかするよりも、長所を伸ばしていこうという方針です。
僕はスタッフのことを、ある意味「お客さま」だと思っているんです。あるいは、「友達」という感覚。だからスタッフも結構フラットに、嫌なことは嫌って言ってくれるように思います。それが言えないような仕組みにしていたら、人は辞めてしまいますから。
「スタッフはお客さま」という感覚が、興味深いです。
「働いてもらっている」というだけで、とてもありがたいこと。あと数字の話をしてしまうと、たとえばスタッフ1人の売上が月平均70万円、歩合が50%だとしたら、1人あたり会社に月35万円も生んでくれている。そこに対しての感謝もあるから、働きやすい環境を用意したいと思うし、みんなと一緒に自分もがんばろうって気持ちになります。
社内に、部活動もあるとか?
そうなんです。うちは雇用形態に関係なく、希望者が入れる「部活動」があります。サッカーや野球、カラオケ、ダーツなど。僕が多趣味というのもありますが、スタッフの希望も聞いていたら、どんどん増えていって(笑)。そういった部活やイベントがあることで、スタッフ間の人間関係も良好になっている気がします。