第3章誰もがネイルを楽しむことを、もっと身近な世界に
「ヘア業界にある“いいもの”は、ネイル業界にも根付かせたい。
そして誰もが、ネイルを楽しむことを当たり前に。」
田邊さんは他社サロンへ向けた勉強会などを行う「Charis(カリス)」も主宰されています。活動内容について教えてください。
これも「MODE K’s」の金井社長の影響です。金井社長が代表を務める関西の美容サロングループ「パワーズグループ」の勉強会に刺激を受けて始めたものです。活動内容としては、まず経営者に向けて「Diva」をはじめ会員ネイルサロンがそれぞれの取り組みを紹介して情報を共有する「経営者会議」。そしてスタッフへ向けた技術や接客の講座である「ネイリスト会議」を東京・大阪で各1回開催しています。
こちらも「人を育てたい」という想いから始めたのでしょうか?
「Charis」は教育のためというよりも、ネイルサロン同士の「情報共有の場をつくりたい」という想いがメインです。「美容師に必要なものは、ネイリストにも必要」というのが私の基本的な考え方。美容師や美容サロン経営者が集まって勉強会を開いているのだから、その「ネイリスト版をつくろう」と立ち上げました。
今後「ネイル業界のための活動」として、考えていることは?
ヘア業界では、メーカーやディーラーがサロンへ向けて、新しい技術や商材の情報提供、教育・経営をサポートする勉強会があります。関係性も密接ですよね。ところがネイル業界では、サロンにとってメーカーやディーラーは遠い存在で、さほど交流はありません。それを変えるために「ヘア業界におけるメーカーやディーラーのような役割」を、「Diva」が果たせるようになることが目標です。
自分で言うのもなんですが、うちのスタッフたちは本当に素晴らしいんです!自慢のネイリストに育っています。だから、私たちがこれまで取り組んできた「教育体制」や「サロン経営のノウハウ」を広めていきたい。そして後に続くネイリストたちを、いまの「Diva」以上の成功へと導きたいんです。
実現したら、ネイル業界は大きく変化しそうですね。田邊さんが描く、「10年後のネイル業界」の姿は?
日本ではネイルを楽しむ人の割合はまだ少ないです。ヘアサロンに行くのと同様に、ネイルも「やって当たり前の世界」にしたいですね。ネイルって生活に必要不可欠なものではないでしょう?だからこそ「ネイルの魅力を伝えて広めていくのは、“人間を通してしかできない”」と思うんです。それには、ネイリストがもっとレベルアップしなければいけない。その実現のため、「ネイリストが成長できる教育環境を整えていける存在」になりたいと思っています。
後日、担当してくれたネイリスト・藤岡さんに田邊さんの印象をうかがうと・・・。「悩みを相談すると朝まで付き合ってくれて、いつも自分には思いつかない視点の高い答えをくれる」とのこと。
こういった男前エピソードに、事欠かない田邊さん。インタビュー中、時折まじる大阪弁は「あかん!」「やったる!」など、負けず嫌い全開(笑)。「白馬の王子様は、白馬ごとかつぐ覚悟で生きる」。これはあるセミナーで田邊さんが発したセリフです。
一方で、取材陣のお茶が少なくなった頃にサッと新しいお茶を持ってきてくれたり、見送りの時は深々とお辞儀してくれたりと、きめ細やかな気遣いの数々。お客さまから愛されてきた理由が、十分なほどに伝わってきます。
その田邊さんのDNAは、「教育」を通して、ちゃんと後輩へと受け継がれている。先のサロンで、それを心から実感しました。