女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣

結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。

vol.57保育士2名常駐の無料託児所完備。
スタッフの「もっと」に応えて急成長する秘訣

Hair Resort Ai 上野α店

東京都台東区

都内に５店舗を展開し、今急成長しているサロン「Hair Resort Ai」。4/26グランドオープンした「上野α店」は、こだわりのナチュラルな内装のサロン内に、キッズスペースやペアブース、VIPルームなどを設けるなどさまざまなサービスを提供。オープンわずか３カ月目で、1カ月の新規集客数が1500人を超えるなど大人気店に。
「日本一、女性スタッフに優しいのがウリ」と語る、オーナーの古藤さんにその真意を伺いました。

１取り組み

社会保険、サロン内託児所完備で、
働くママスタッフを手厚くフォロー。

どんな取り組み？

現在、新人スタッフの半分は女性。オーナーの古藤さんは、彼女たちの”もっと〇〇したい”を叶えるには「働きやすい職場と、プライベートな時間を大切にできる環境」をつくることが必要だと考えた。それが、現在の福利厚生の実現につながる。
社会保険を完備しているため、ママスタッフは産休育休の取得と出産一時金や育児休業給付金などを国の規定に沿って受け取れる。
また、今年4月にオープンした「上野α店」には保育士免許のある女性２名を雇い（レセプション業務を兼任）、託児所を設置。スタッフが無料で利用できるようにした。いずれは、区の子どもも受け入れられて、給食の提供や散歩なども許される企業内保育施設をつくりたいと考えている。企業内保育施設の許可を受けると区から補助金も出るため、保育士を増やせ、さらに安心安全な場を提供できるという利点がある。

サロンと同じフロアに設置した託児所は、８畳ほどのスペース。写真はママスタッフの三井さんと娘の陽向ちゃん

サロンにはおもちゃも置いてあり、空いた時間にスタッフの子をみんなであやすことも

メリットは？

「女性が妊娠・出産、子育てによって、金銭的にも精神的にも不自由になるのはいけない」という思いを持つ古藤さん。「会社として費用がかかっても、スタッフにメリットがあるものならやるべき、ひいてはそれが会社のメリットになる」と考え、決断した。
本格復帰までに支給される数々の給付金は、女性スタッフにとって心強い金銭的サポートであり、サロン内の託児所は改めて働ける喜びや心の余裕をもたらしてくれるものに。
充実したフォローによってイキイキと働くママスタッフの情報が人づてに広まり、妊活中・妊娠中で一度現場を退いたママや、他サロンのスタッフからの応募が急増している。

2取り組み

女性スタッフのみ適用のフレキシブルな勤務時間。
オーナーの思いを伝え、スタッフ全員を説得。

どんな取り組み？

女性は勤務時間帯を17時まで短縮できたり、週休2日制を積極的にとることができたりするなど、できるだけプライベートな時間をつくれるシステムを導入。
女性スタッフが抜けた夕方からの人材を確保するため、時短勤務ができる人材を募集するなどの苦労も多いが、「一向にかまわない」と古藤さんはいう。
男性スタッフから反感があるのでは？と思いきや、古藤さん自らスタッフ全員に、「女性と男性は体のつくりも体力も全然違うのだから、働き方も違って当りまえ。女性に優しいのが、このサロンのウリです」と、ふだんから伝えることで理解を得ている。

メリットは？

「そろそろ子どもが欲しいのでサロンを辞めて妊活したい」。そんな女性スタッフの言葉をきっかけに、女性がもっと活躍できる場をつくりたいと思った古藤さん。「辞めるのではなく、時間を短縮して働くという選択はどうだろう」、と提案したのが女性活躍のしくみづくりの発端だった。その女性スタッフも、仕事を抑えて働くことで、めでたく妊娠。妊娠中はスタッフたちの温かいフォローを受けながら幸せな出産を迎えることができた。
「うちは年齢的に若く、未婚の女性スタッフが多い。17時の早期退社や、週休2日制にすることで、その時間をデートに当てたり、婚活、妊活などに使える。女性としての夢も諦めないで欲しい」と古藤さんは語る。

古藤さんが独立してから、初めての妊娠・出産したママスタッフの三井さん。彼女の存在が、女性スタッフが働きやすい環境を整え始めるきっかけに

３取り組み

女性にさまざまな活躍の場を用意する、職種転換制度を導入。

どんな取り組み？

例えば、「子育て、家事と仕事を両立したい」というスタッフには、正社員からパートタイムでの働き方を。「接客のプロを目指したい」というスタッフには、レセプションへの転換を。さらには、メイクアップアーティスト、エステティシャン、訪問美容など、スタッフの個性や特性に合ったさまざまな道が用意されている。年齢的にプレイヤーとして働くのは厳しいスタッフが出てきた場合に備え、いずれは技術育成講師という道も用意する予定だ。

メリットは？

「ライフイベントによって、働き方を左右されやすい女性スタッフに、複数から選べる道を提供することで、大好きな美容を諦めて欲しくない」そんな思いで、さまざまな形で働ける機会を提供している。
それは同時に、美容という広い世界で技術や感性を磨くことになり、美容師としてのスキルアップにもつながる。
古藤さんは女性スタッフがさまざまな世界で活躍し、稼げるフィールドを切り開いていくことで、優秀な人材が長く在籍するサロンを目指している。

「いろいろなシーンで、女性がしっかりと稼げるフィールドを用意してあげるのが、オーナーの役目」と語る古藤さん

オーナーインタビュー

オーナーの古藤知裕さん。専門学校を卒業後、スタイリストをするも、スノーボードをするために海外留学するなど、稀有な経歴の持ち主。10年間、某FC系列のサロンで店長として勤め、２年前に独立。FC時代につくった３店舗、独立してから2店舗を展開、2020年までに10店舗を目指している

Q. 「女性スタッフに優しいのがこのサロンのウリ」という、 ユニークな発想はどこからからきたものですか？

A. 10年前、FC展開するサロンで店長として働いていた時、
続々と辞めていく女性たちを見て、変革の必要性を感じました。

2年前に独立するまで店長として働いていたサロンは、社会保険はもちろん産休・育休制度も皆無。朝から終電近くまで一生懸命働いていた女性スタッフたちが、結婚・出産を機に辞めていくのを目の当たりにしてきました。店長としてそれを止める術がなく、何度か上司に「制度を変えて欲しい」と直談判したけれど全然ダメ。しくみを変えるには、自らが経営者にならないと無理だと分かり、完全独立を決意しました。
自らオーナーとなってからは、女性が働きやすい環境を整えることに心血を注ぎました。「結婚や出産があってもいつまでも美容師として働いていたい。いつまでもお客さまから支持してもらえる自分でありたい」というのが多くの女性スタッフの本音だと思います。そんな女性たちの「もっと」を叶えるために、今後もできることは積極的にしていくつもりです。

Q. 昨年から新規で２店舗増やし、現在5店舗。 急成長の中で人材はどのように確保していますか？

A. 「美容師は自慢できる職業だ！」と伝えるべく自ら専門学校へ行って美容師の卵たちに直接アプローチ。

給料が低い、という悩みを抱えている美容師が大勢います。そんな中で僕は今までの常識を覆し、”給料も良く、入客できるお店づくり”と、”仲間が頑張りたいと思える環境づくり”を目指してきました。今それが実現しつつあり、少しずつですが評価されているように思います。
新しいスタッフを募集する際は、自ら美容専門学校に赴き、現在の美容師の現状や、自分のサロンの成長率、昨年同じ専門学校から入ったスタッフが、今どんな働き方をしているかなどを伝える活動をしています。こういう形で新卒を募集しているサロンオーナーって、あまりいないでしょうね。
現在、うちのサロンで実施している社会保険完備、無料託児所などの福利厚生は、これから美容の仕事を志す若者にとってサロンを選ぶポイントになると思います。
美容師という職業は低賃金で不安定だと感じている人たちに「うちのサロンは、ご両親や友人、彼女、彼氏にも自慢できる。10年経った時、”ずっとここで働いていてよかった”と思えるサロンですよ」と伝えて回りたいですね。

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