第2章急成長を叶えた独自の出店方式
「他業界の店舗ビジネスの流れを見ていれば、
ヘアだけの事業拡大がムリなことは明白でした。」
お父さまに呼び寄せられたときはヘアサロンが2軒、そこから13年で現在はヘア、ネイル、アイラッシュなど6業態40店舗以上。この拡大を支えているのが、坂之上さんが「アメーバ出店」と呼ぶ出店方式です。こちらについて教えてください。
まず基本となるヘアサロンを出店し、その近くにネイルサロンを出店、さらにその近くにエステティックサロン、と異業種のサロンを出店していって、商圏をどんどん広げていく方式です。するとヘアでビームズグループを知ったお客さまがネイルにも来る、そのネイルに来たお客さまがエステにも･･･というようにそれぞれのお客さまが流動し、結果的には各店舗の来店客数を増やすことができます。
この出店方式はいつごろ構想したのでしょう。
会社を引き継いで、経営計画書を作るようになったのと同時期ですね。「美容業界は遅れている」と言われると思いますが、他業界の流れがその後に美容業界にやってくることがよくあります。だから僕は経営において美容業界ではなく、他業界を参考にしているんです。当時の店舗ビジネスは、八百屋さん、精肉店といった専門店がなくなってスーパーマーケットが台頭していました。この流れを見れば、ヘアサロンがどうなるかも予想がつきます。ヘアに特化していては今後、拡大することは難しいと。
そもそも「美容師」の定義だって、髪を切るだけではないはずです。美容にかかわるものすべてを美しく整えるのが役割。だから経営計画書と同時に決めた経営理念もヘアに限定せず、「美容を通じて人々の美的生活を豊かにすること」としました。こうした背景から、今後はヘア、ネイル、アイラッシュ･･･と事業を広げるべきだと考えました。
スーパーマーケットのような複合サロンではなく、それぞれの専門店にわけた「アメーバ出店」にした理由は？
これは偶然から始まったというか、最初は大箱でトータルビューティサロンを考えたんですが、いい場所がなくて。ヘアの近くに、ネイルサロンを別店舗で構えたんです。そうしたらヘアとネイルの相乗効果でお客さまが増えていく。もし美容室の中でネイルをやっていたら、その店で完結していたでしょう。「これはおもしろいな」と気づきまして、別店舗でさまざまな業種を展開していくアメーバ出店方式をその後も続けることにしたんです。
ビームズさんのもう一つの特徴は、トータルビューティを展開するにあたり「1人のスタッフがヘアスタイリストでもありネイルの技能も持っていたりすること」ですね。
うちではヘアやネイルなどの技術者をまとめて「ビューティシャン」と呼んでいます。美容師として入社しても、半年間はアカデミーで練習する日々。ですから1人が複数技能を持つことができます。いまいる一番すごい子は「いろんなことをやりたい」といって入社してきたスタッフで、24歳にしてヘア、着付け、ネイル、メイク、フェイシャルエステ、アイラッシュ、ボディメイクアドバイザーと7職種の技能を持っています。ほかにも美容師として入社したけどネイル担当になったり、ネイルからエステになったりと働き方を変えるマルチプレイヤーはたくさんいます。
坂之上さんは常々、美容業界の生産性向上を目指すとお話されています。マルチプレイヤーを育てることも、生産性を高めることにつながりますね。
おっしゃる通りです。美容のすべてに携わる会社として、ヘアにこだわらない姿勢を大切にしています。ネイルやエステなど新規事業を立ち上げるのも、会社全体の生産性を上げるため。いま現在、ヘアカットに対する一般的な価値観は3000円程度だと思います。こうした世間からの評価というのは、うち1社がどうにかできるものではありません。うちには何店舗もヘアサロンがありますが、そのうち１軒なら「カット2万円」というサロンを作ることは可能でしょう。でも全店舗をその料金体系にして、いまと同様の集客ができるかといえばムリな話です。では、カットの単価を上げられないならどうするか？「さまざまな事業を展開しながらスタッフ各自が複数技能を持ち、1人当たりの生産性を上げていく」という方法になるわけです。
名古屋進出の1号店であり、坂之上さんが初めて立ち上げたヘアサロン「Bee-ms HAIR（ビームズヘア） 藤が丘店」はいまも健在。この周辺にはネイルサロンやボディケアサロンもあり、エリア単位でお客さまのトータルビューティをサポート
2016年7月にフェイシャルケア専門店「フェイシャルbar」を6店舗同時オープン。松やにを主成分とした温パック「バイオウォーミーパック」をセルフで行うスタイル。新店舗を立ち上げる際は初期費用を抑えて利益率を高めることも重視しており、6店ともに既存店舗に併設
