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結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。

vol.45元銀行員のオーナーが、京都の老舗サロンを改革!
業界の慣習を次々と変えた「会社づくり」とは?

Marry's西院

京都市右京区

1961年から続く京都の老舗サロン「Marry’s」。2代目オーナーの中嶋さんは元銀行員という異例の経歴を活かし、一般企業と同様に女性が長く働ける会社づくりを進めています。「Marry’s 西院」を、女性スタッフは全員ママのサロンにしたのもそのひとつ。「美容業界の不思議な慣例を根本的に変えたい!」という経営方針についてうかがいました。

1取り組み

マネージャー以外、全員ママ!女性スタッフが長く活躍できる場として、スタッフを編成。

どんな取り組み?

現在、全従業員20名中8名がママスタッフとママ比率が高い「Marry’s」。なかでも「Marry’s西院」は男性マネジャーを除いた全員がママスタッフだ。出産や育児でスタイリストを辞めていた「Marry’s」のOGや、同様に他店を辞めていたママスタイリストを中途採用して組織したそうだ。

背景とメリットは?

実家の家業を継いだオーナーの中嶋さんは、「Marry’s」と同等の老舗サロンが、代替わりとともに縮小していく状況を見てきた。「Marry’s」を自分の代で終わらせず、企業として発展させる経営が必要と考えたそうだ。支店の店長が育つと店ごと独立させ、「Marry’s」本体は新たな支店をつくる方式で、グループとして拡大している。今までに5店舗独立させてきたが、女性店長は出産や育児のライフステージがあるため独立はしにくい状況だった。そこで、新たに女性が長く活躍できる場として「ママスタイリストだけの店舗」をつくった。同じような事情を抱えたスタッフ同士、協力しやすい体制となっている。万一、複数のママスタッフが同時に子どもの事情で早退してしまっても、他店からヘルプが入れるようにしているという。

ママ同士だからこそ理解し合えることが多く、お互いに気を使わずに仕事ができる

ママ同士だからこそ理解し合えることが多く、お互いに気を使わずに仕事ができる

2取り組み

外部講習は勤務時間内に、スタイリストは1年でデビューさせるなど、抜本的に業界の慣例を変える。

■どんな取り組み?

「Marry’s」では、外部の講習に平日の昼間でも参加させ、勤務時間として扱っているという。普段の練習も深夜まで行うことは禁止し、スタッフを休日や時間外に極力働かせない努力をしている。
また、教育システムを刷新し、アシスタントは1年でスタイリストデビューさせている。デビュー後も研修は続けるが、お客さまの希望のスタイルにこたえられると判断した場合は、どんどん担当させているそうだ。

なぜそうした?

銀行員だった中嶋さんが美容業界に入ってみると、「合理的でない不思議な慣例」が多すぎると感じたそうだ。スタッフが外部講習を業務外として定休日に参加すること、深夜まで練習したりランチを食べずに働くことが当然で自慢気に語られること、社長を「先生」と呼ぶことなど、例を挙げたらキリがない。そうしたことをひとつひとつ改善した。まずは労働環境が改善されなければ、女性が子どもができても続けられる環境は到底作れないからだ。
また、アシスタントが3年も研修状態にいることも不合理だと思ったという。「一般企業では3年も利益を生まない人材を抱えませんよね。だから早くデビューさせます。それによって成長スピードも速くなります」(中嶋さん)。

「美容業界の慣例は一般企業から見ると不思議なことだらけです」と語る中嶋さん

「美容業界の慣例は一般企業から見ると不思議なことだらけです」と語る中嶋さん

3取り組み

全店のスタッフがお互いの事情を理解し合う場をつくる。

■どんな取り組み?

年に2回、全社員が一堂に会する場を設けている。ひとつは4月の新人入社後に行う全社員合同研修で、京都のお寺で座禅を組んだり、一人ひとりが自分の想いを発表する場だ。もうひとつは年末の忘年会を兼ねたクリスマス会。このときは社員全員が子どもを連れて参加し、会社から子どもたちへのプレゼントも用意する。

背景とメリットは?

社員旅行やイベントなども頻繁に行っているが、子どもがいるスタッフはなかなか参加できない場合もある。そのため、全社員のコミュニケーションの場として年2回の行事は必参加としている。全員が顔を合わせることで、お互いにどんな事情を抱えているかを共有でき、店舗を超えた協力がスムーズになるそうだ。

今年の4月に行った社員研修での座禅。以前はお茶会や書道をやったこともあるそうだ

今年の4月に行った社員研修での座禅。以前はお茶会や書道をやったこともあるそうだ

クリスマス会ではスタッフがサンタに扮して、社員の子どもたちにプレゼントを配る

クリスマス会ではスタッフがサンタに扮して、社員の子どもたちにプレゼントを配る

オーナーインタビュー

オーナーの中嶋慎悟さん。銀行員として活躍していたが、創業者であるお母さまから1989年に経営を引き継いだ

Q. 「業界の慣例を変える」とは簡単ではないと思いますが、ご苦労はされませんでしたか?

A. 他店がどうであれ、うちのスタッフにとって悪いことは何もありません。

美容業界の方とお話しすると、私が考える「普通」が「普通じゃない」と言われます(笑)。けれど、子どもがいても働きやすかったり、早く帰れたり、営業時間に講習に行けることはうちのスタッフにはいいことしかありませんよね。一番不思議だったのは、この業界は「カットができる美容師」という技術者しか職種として認めていないこと。オーナーがスタイリストもやりながら人事も経理もやるなんて一般企業ではあり得ません。もっと分業すれば効率的になるはずです。極論すれば、カットをしないスタイリストがいてもいい。カラーやパーマに特化した技術者だって立派なスタイリストです。
オーナーについて言えば、経営者の仕事は「スタッフが働きやすい環境をつくること」です。一代で終わっていいサロンなら別ですが、オーナーが技術者であることにこだわりすぎると経営は続かないと思います。

Q. しかし、この業界しか知らないオーナーさんには一般企業の「普通」を知ることが難しいのでは?

A. 異業種交流の場はいくらでもある。それに参加するオーナーの意欲が必要。

地元の商店の集まりもありますし、勉強会など異業種の人と交流できる場はいくらでもあります。問題は、それらの交流会が土日にあるなど、美容業界の人が参加しづらい時間帯に行われているケースが多いことです。そのときに、オーナーがスタッフに仕事を任せたり、自分の時間をつくれるよう自己管理ができるかどうかです。つまり、接客でなく経営することが自分の仕事と考えて、経営に時間を割けるかどうか。オーナーが自分の殻を破れないと、女性の力を活用したり、若い人が続けたくなるサロンづくりが遅れてしまうと思います。

Salon Data

Marry's西院【マリィズ サイイン】

アクセス
阪急西院駅から徒歩5分
創業年
1961年
店舗数
4店舗
設備
5席(Marry's西院)
スタッフ数
約20名(全店舗)
URL
http://beauty.hotpepper.jp/slnH000062331/
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