市役所に相談に行ったら、認可外ならできると教わりました。だけど対応してくれた職員さんからは「やめたほうがいいですよ」って言われました（笑）。保育園は年々減少していて、1年間で80園もなくなったんです、と。認可保育園なら補助金が出るけど、認可外は一切ないから大変だと心配されたんです。

なぜ保育園がつぶれるんだろう？と考えました。僕自身も保育園育ちだけど、調べてみると保育園って特徴がない。お母さんたちも働くために「仕方なく預けている」という意識で、クオリティを求めてこなかった。でも少子化の時代になって、子ども1人にかける想いは変わってきています。じゃあ単に預ける場所ではなく、「センスを磨く場」として提案すればイケるんじゃないかと思い、コンセプトを決めました。

子どもを「預ける」って言い方をするのは保育園だけなんですよ。僕が目指したのは、預けるんじゃなくてセンスを磨くために「通う」保育園。体操やダンスの教室みたいに、月謝感覚で園費を払って通う場所。そのために、フラワーアレンジメントのおけいこをしたり、年1回は子どもをモデルにしたファッションショーをしたり、従来の保育園とは違う特徴を考えていきました。幼保一体のような感覚で、長時間預けることもできるし、教育もできる保育園を目指したんです。

当時、美容室があったビルの2階を新たに借りて、先生も5人雇って5月にオープンを迎えました。オープン前の3月・4月には園児募集の説明会を開いて、参加した方たちは興味を持ってくれていい反応でした。ところがスタート時の園児はゼロ、毎月100万円の赤字です（笑）。だけど仕方ないですよね、何の実績もない新しい園に大事な子どもを任せるなんて不安でしょうし。

月預かりでは園児が来ないとわかったので、まずは一時保育の獲得から攻めることにしました。子どもの「何カ月健診」ってあるでしょう。その日の利用を狙って役所前の歩道でチラシ配りをして、ポスティングも毎日。何十万枚かなってくらい配りましたよ。

あとホットペッパービューティーでも、「うちの美容室は施術中にお子さんを無料で保育園に預けられる」ってことをうたい文句にしました。美容室を気に入っている人は保育園にも興味を持ってくれるし、預けるときにどんな保育園かも見てくれる。そうすると翌月には18人の園児が集まりました。だから、最初は美容室のお客さまから広まっていったのが大きいですね。

従来の保育園のやり方に合わせようとは思わないので、そういう苦労はありません。それにうちで働きたいと来てくれる人は、たぶんそれまでいた保育園が嫌で辞めたと思うんです。昔ながらのやり方が合わない、報酬が労働の対価として見合わない、したいことができない、とかですね。

雇う前にはうちのコンセプトをしっかり説明して、それを聞いて働きたい人に来てもらうという考え方。毎年同じような行事をせず、うちは常に変化をしていくから新しいことに対応してほしい。美容室もやっているからメイクやネイルもきれいにしてねって伝えて、先生方の美意識も高くしてもらう。富裕層の保護者さんにとっても、そういう先生のほうが違和感ないですからね。うちの先生は金髪もOKにしているし、かっこいいオリジナルのユニフォームも用意しています。

あと働く意欲って、意外と業務面以前の部分に左右されるもので、自由度があることが大事。だから上から押さえつけず、先生方にある程度の権限を持たせるようにしています。入園したいって保護者の方が来た場合も、先生方が働くうえでやりにくそうな相手だと言うならばお断りします。入園してもらったほうが収益にはなるけど、目先のことよりも先生方の判断を重視します。もちろん納得いく理由があるかは僕が判断しますけどね。そういう環境を整えているから、うちの園で働きたいって人が地方からも来るんです。

はい。ちなみに、自分を含めて3人で始めた「WOODSTOCK」オープンニングメンバー(当時1年目アシスタント)だった女性スタッフは現在マネージャーを務めています。今年4月に産休・育休1年を経て復帰して、時短でも月90万円前後の売上を維持していますね。

ほかにも、まつエク、ネイル、整骨院のスタッフ8名が、うちの園に通わせながら勤務しています。

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  保育園バスはレトロなデザインの車種を採用するなど、細部まで「センスを磨く場」にふさわしいサービスにこだわっている

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  高嶋さんがデザインコンセプトを考えた保育園の制服はGジャン＆キャップ！先生たちも自社系列のサロンにて割引価格でヘアカラーやまつげエクステ、ネイルを楽しめる