第3章エステサロンが生き残る道
「美容家電・美容医療の競合がある中、
エステサロンを選んでもらうには?」
コロナ禍になってから一気に、「店販」に注目が集まりましたね。榎戸さんは、かなり前から力を入れていましたが、やっていてよかったと思う点は?
エステサロンというのは、ベッド数と労働時間が決まっているので、がんばっても生産性に限界がありますよね。でも店販であれば、いくらでも客単価を上げることが可能です。
コロナ禍で、あらためて店販のありがたさを感じました。2020年4月にあった1回目の緊急事態宣言で、サロンを2カ月休業したんです。その時も、店販の売上に助けられました。
あとエステって、どうしてもお客さまが「卒業」してしまうことも。だけど、その後も化粧品だけ買いにサロンに来てくれるお客さまが、たくさんいます。
今後、サロンの店舗展開は?
サロンの店舗を、増やす予定はありません。ただ、お客さまと直接関わることができるのは、やはりサロンの強み。ここで成功事例をつくって、他のサロン、スタッフのみなさんに還元していきたい。うちの製品を通して、たくさんのサロンと関わりが持てたら、うれしいですね。
それには、自社製品の認知度を上げる必要がある。今後は「リアル店舗」を持っているか、どうか、が重要になってくると思います。差別化のためには、勝負に出ないと…。2023年末から2024年にかけて、物販のみ販売する店舗をいくつか出店予定です。
まずは、「国産オーガニックコスメNo.1」が目標。そして、原料も工場も“オールジャパン”にこだわった製品を「世界」に広めたい。今までも海外での販売は行っていましたが、2022年末に東アジアに進出して、海外展開への足がかりにしたいと考えています。
エステ発のブランドで、一般の方が知っているくらい有名なものって、まだないのでは?なので、そういった存在になりたいですね。そこから、エステ業界全体の信用を上げることができたら、と思っています。
常に、業界全体をよくしたい、という想いがあるんですね。
2011年に「エスグラ(一般社団法人エステティックグランプリ)」を立ち上げたのは、無理な契約などで、エステ業界全体の信用がなくなっていると感じたからです。いちサロンではなく、みんなで手を取り合っていかないと、業界全体がダメになると思いました。
「エスグラ」によって一番大きく変わったのは、経営者同士、横のつながりができたこと。それまでも、メーカーの勉強会などでサロンの方に会う機会はありましたが、“みんな敵”みたいな雰囲気もあった。それが、お互いに成功事例や悩みを共有できるようになりました。
また、エステティシャンたちが“目標とする場”ができた、という点も。売上だけではなく、コンテストという別の角度の目標ができると、目の前の仕事もがんばれると思います。
今後、どのようなエステ業界になってほしいですか?
美容家電・美容医療・ヨガ・プライベートジムといった、たくさんの競合がある中、どうしたらエステサロンを選んでもらえるか?
市場を大きくするのは簡単ではありませんが、「ビューティー&ヘルスケア」という分野で見れば、広がります。「健康・未病・予防」の部分を、どれだけサロンのサービスに取り入れられるかが、肝になってくる。
サロンに通っていても、化粧品はドラッグストアで購入する人もいます。これからのエステサロンに求められるのは、一人ひとりのお客さまに合った施術とカウンセリング、日常のケアを店販製品でいかにフォローできるか?エステサロンが生き残る道は、そこにあると思います。
これだけ多くの情報がある世の中で、エステサロンに通う理由、店販を購入する理由は?「サロン、またはエステティシャンを信用しているから」…そう言ってもらえるような、業界にしたいですよね。
都内に新しくできた注目スポットや展示会、地方の観光地からおいしいお店まで…。
そこから得た情報を、サロン・製品づくりのヒントにしているように見えます。
数年前、エステティックグランプリを会場で見学した時のこと。
エステティシャンのみなさんが、本気でコンテストに向き合い、
感激で号泣し、時に心からの笑顔を見ました。
榎戸さんにとって、エステサロン経営やオーガニック製品は、
すべて「エステ業界全体をよくしたい」という想いに、つながっている。
一人の存在が、業界の未来を明るく照らしていることは、間違いありません。