第2章ガーナにアカデミーを開校
「寄付では、産業が育たない。
真のSDGsは“雇用の創出”」
2022年3月に、アメリカ・LAにも店舗をオープンされました。LAに出店した理由は?
僕はアメリカ、特に西海岸のカルチャーに強く影響を受けてきたので、仕事でも何かしらこの地に関わりたいと、子どもの頃から思っていました。
また、スタッフのためでもありますね。「いつかはLA店や海外で働きたい」といったように、夢を追える会社であり続けたいので。
でもLAでは、店をつくる段階から超大変!向こうの人って、スケジュールはむちゃくちゃだし、なかなか働いてくれない。施工に立ち会った際、「みんなでレンガを貼ろう!」と言ったら、親方が「材料を忘れたから、今日は帰ろう」って。「ちょっと待って!僕が今から買ってくるから、やってもらえませんか?」みたいな(笑)。もろもろの許可を取るのも一筋縄ではいかないし、「彼女に振られたから、この町にいられない」という理由で辞めてしまう人がいたり…。
日本と同じやり方では失敗するので、きちんとローカライズしながら進めて。今はいい人が増えてきて、ちゃんとまわるようになりましたね。
2022年12月には「アフリカ・ガーナにバーバーアカデミー設立」を目的とした、クラウドファンディング(以降、クラファン)も話題になりました。
2010年からガーナで雇用機会の創出に取り組んでいる「認定特定非営利活動法人 CLOUDY」とパートナーシップを組んで、プロジェクトを始動しました。それが、バーバー育成を通じて雇用を創出するための「CLOUDY × MR.BROTHERS CUT CLUB BARBER ACADEMY(クラウディ×ミスターブラザーズカットクラブ バーバーアカデミー)」です。
CLOUDY 代表の銅冶 勇人さんとは、知人の紹介で数年前に出会ったのですが、1年くらい前に「ガーナにバーバーアカデミーを設立したい」という構想を聞いて。僕も、前々から慈善事業に興味があったので、ぜひ一緒にやりましょう!と。
アカデミー開校に必要な資金を集めるため行ったクラファンでは、おかげさまで591万9,000円もの支援をいただきました。
なぜ、「ガーナ」だったのでしょう?
ガーナの若者は、たとえ給料が1万円でも、その半分を髪型やファッションに費やすほどオシャレな人たち。散髪も2週間に1回行くほどです。しかし、働く環境は過酷な状況。人口の8割が、いわゆる日雇い労働者に属していて、特に若年層の失業率の高さが問題になっています。手に職をつけたい。でも、技術を学べる環境がない。
ガーナの首都・アクラには、世界最大のゴミ(電子廃棄物)捨て場があり、スラムが形成されています。そこのゴミを拾ってお金にすることで、平均月給くらい稼げる。でも、1カ月に1度くらいは爆発が起きる危険があります。また、廃棄物を燃やすことから出る有毒ガスで病気になったりと、40歳まで生きられない人が多いんです。
よかれと思い寄付で送った物品もゴミとなり、そのシワ寄せは必ず途上国にきます。寄付を送ると産業が育たないから、仕事を失う人がいる。誤った慈善事業やSDGsは、逆にこの国を汚しているという事実を学ばなければ…。真のSDGsは、“雇用の創出”なんです。
世界を、すぐに変えることはできないかもしれない。でも、それで生計を立てるしかない目の前にいる人たちを、「理容師になって、ハサミ一本でスラムを出ようぜ!」と、救うことはできるんじゃないかと。
とても意義のある取り組みですね。アカデミー開校は、いつくらいの予定ですか?
2023年夏に、アクラに開校予定です。
定期的に日本から講師を派遣し、基礎的な技術からお客さまへのケアまで、MR.BROTHERSが培ってきた「質の高い技術とホスピタリティ」を伝えていきます。
初年度は年間で100名の生徒を迎え入れ、1年間で合計2,000時間のトレーニングを予定しています。授業は3学期制で、各学期の終わりに試験を実施。試験に合格する度に証明書を発行し、合計3回の試験+最終総合試験に合格したら修了証書を授与して、その後の雇用機会の提供や開業支援を行います。
同様のことが他の国でもできたら、バーバー界の「ヴィダルサスーン」になりますね。
まさに、それを狙っているんです!いろんな国での横展開を、考えています。