第3章セラピストの地位向上のために
「最終目標は、大学院の設立。
セラピストの地位を上げたい」
今後、あらたな構想はありますか?
教育機関でいうと、2027年を目標に、「大学院」の設立を考えています。「もっと深くマネジメントを学びたい」「さらに技術を深く研究したい」といったニーズにも応えていきたいからです。
また当社は、専門学校ができるまでは、セラピストの7割が大卒ですが、親や学校の先生に「セラピストになりたい」と言うと、反対されることもしばしば。業界で、何かトラブルが起きるたびに、内定者もお客さまもサーッと引いてしまう。
そんな中で、自分の人生をこの会社に預けてくれた人たちが20年、30年と働いてくれる。社員たちが選んだこの会社を、職業を素晴らしいものにしてあげたい。セラピストの社会的地位を上げたい。みんなが憧れる業界になれば、働く人が増え、競争が激しくなる。そのなかで磨かれた人材が生き残っていける、そのためにも大学院を設立しセラピストの博士号を出したいのです。何よりもお客さまが喜んでくださいます。
エステティックサロンに大切なこと。それは、サロンに一歩入ったときに、幸せな愛の風が吹いているか?お客さまを幸せにしたいのであれば、自分が幸せでないと、それは実現できません。
エステティックは、女性が多い業界です。長く活躍できるために、取り組んでいらっしゃることはありますか?
当社は、95%が女性です。社員は700名ほどですが、産休・育休を取っている社員は、常に1割くらい。3人、4人と、子どもを多く持つ社員が多いのも特徴です。子どもが生まれると大変なこともありますが、会社としてサポートしていきたいと思っています。
毎年12月のクリスマスには、社員の小学生までの子どもたちにプレゼントを送っています。将来、ミス・パリ・グループで働いてくれたらうれしいので、ゴマをすっております(笑)。
親子二代で働いてくれたら、素敵ですね。
ちなみに、ご息女である下村 留弥以(るびい)さんに、2021年から「ミス・パリ」「ダンディハウス」の経営を引き継がれました。
ホームページで拝見した留弥以さんの言葉に、「“理論に基づいたサロンをつくりたい”という母のその想いは、教育の基盤として受け継がれている」と。頼もしい存在なのでは?
人を大事にできる子なので、社長にしました。家では、口答えしかしないんですけどね(笑)。でも、私のことも大事に思ってくれているのは伝わってきます。お手伝いさんや、まわりの方々からも「留弥以ちゃんは、とてもいい子で、私のことを大事にしてくれる」と言ってもらうことが多くて。
なので、私の大事な社員たちのことも、きっと大事にしてくれると。あ、あと経営学部を出ているので、私よりは数字が得意かな。留弥以も子どもが3人いるので、私も孫たちの面倒を見ているんですよ(笑)。
お忙しいなかで、すごいですね。
長きに渡って、下村さんが常に挑戦し続けられる源泉は?
とにかく、お客さまに喜んでもらうことが好きなんです。「何をしてほしいだろう?」「どんなことをしたら、早くきれいにしてあげられるだろう?」…そんなことを、いつも考えてきました。
お客さまとの会話のなかで、「こういう試験があって合格しました」「こんな資格が取れました」とご報告すると、すごく喜んでくださるんですね。お客さまは、セラピストに学んでほしいんだな、と感じました。
私たちの生活は、お客さまが支払ってくださったお金で成り立っています。感謝しかありません。お客さまにお返しできることがあるとすれば、それは私たちが学び続けること、成長し続けることです。教育に関しては絶対に、施設も時間も惜しみません。
日本中にも、世界中にも、美しい人が増えたらうれしいです。これからも、そのための教育を、一生懸命やっていきたいと思います。
『やんちゃで、正義感が強い子だったと思います。泣いている女の子がいて「どうしたの?」と聞くと、◎◎くんにイジメられた、と。そうすると、私が出ていって、男の子と取っ組み合いのケンカに。自分の洋服がビリビリになって、いつも泣きながら帰るんですけど、でも行かなきゃって(笑)』
お客さまの要望に応え続けてきたのも、ひとえに正義感から。たくさんのセラピスト、そして美容の未来を担う学生たちも救っている。
下村さんの正義感が、エステティック業界をも大きく変えたであろうことは、間違いない。