第2章サステナブルから、リジェネラティブへ
「プロダクトの原材料となるクロモジ。
静岡県と協業して森の再生事業もスタート」
自社プロダクトの数は、現在どのくらいありますか?
松岡●ネイル・ヘア・ボディケアなど、すべて合わせて300くらいです。短いフェーズで開発しているものもありますが、ブランドのコア価値を担う部分でもあるので、一年~二年かかることもあります。
週に一回「開発会議」を設けて、開発チーム全員と、全サロンの各部門(ヘア・ネイル・ヘッドスパ・エステ・アイラッシュ)責任者が集まります。そこで、サロンで行っている技術や、お客さまの需要などのフィードバックを経て企画を決める。そして試作品をつくり、できあがったらテクスチャーを確認して、より良いものにしていく、ということを繰り返しています。プラス週に一回、季穂・渡邉・開発チームとで、プロセスや細かい部分を決める会議も。
ネイルオイルをはじめ多くのヒット製品を生み、かつ長く愛される秘訣は、どこにあると思いますか?
小笹●「サロン発のブランド」であることが大きいですね。日々お客さまの髪や爪やボディに対するお悩みに向き合っているからこそ、サロンでの気づきが製品づくりに生かされています。
ukaがいちばん提供したいのは、「また体験したいサービス」。サロンもプロダクトも、リピーターの方が非常に多いんです。
ukaの製品は、サステナブルな印象も。そのあたりも、支持されている理由のひとつだと感じます。
松岡●さらに今は、サステナブルから、リジェネラティブを目指しています。サステナブルが100年後、1,000年後も生きられる環境を持続させることを目指すのに対して、リジェネラティブは維持することを超えてより良くしていくことを目指しています。ukaでは、地球環境を回復させて循環する方へ進むことを「Regenerative Good(リジェネラティブ グッド)」と定義して活動しています。
なかでも2024年7月に発売した「uka IZU Shampoo ・Conditioner(ウカ イズ シャンプー・コンディショナー)」は、その「Regenerative Good」を体現した製品です。12月19日には同シリーズのボディウォッシュとハンドウォッシュが新たに発売されます。
「IZU 」というのは、静岡の「伊豆」から?
松岡●そうです。原材料には伊豆半島の森にあるクロモジ(山地に生える落葉低木)や海のフノリ、利島の椿などを使用。クロモジというのは日本固有の原種で、昔はいろんな森にありました。でもスギやヒノキといった葉が落ちない木々がたくさん植えられたことで日光を遮り、光合成ができない。足元は土むきだしで、何も生えてこない状態になってしまった。
生産者さんたちはスギやヒノキを間伐して、木漏れ日が入る森に戻しています。そうすることで、クロモジをはじめ多様な木々が、バランス良く育つ。再生のカギを握るのがクロモジで、それが大きくなったら小枝などを売り、対価が入る。森の管理者である地元の方々も、きちんと潤う仕組みです。ukaは、静岡県が取り組む「森の力再生事業」に賛同し、協業をスタートしました。
プロダクトを通して、そこまで大規模な取り組みをされているとは驚きました。
小笹●海と山の大循環ですね。豊かな森では腐葉土の栄養素が雨で海に流れ込み、多くの海藻を育てる。静岡の森や海が、どんどん良くなっていくんです。
プロダクトをつくることによって、お客さまも家族も地球も地域社会も、そして我々もうれしい。ukaのブランドビジョンである「うれしいことが、世界でいちばん多いお店」を体現する製品ができたと思っています。
2023年2月に発売された「uka ヘナシリーズ(ヘアカラー)」も、大きな話題を呼びましたね。
松岡●2022年からサロン体験をスタートし、2023年からホームケアプロダクトを発売。ジアミンアレルギーなどでヘアカラーをしたくてもできなかった人の新たな選択肢になっています。また、サロンで施術する技術者の手肌にも、地球にもやさしい。欠品による問合せの量がとても多く、申し訳ない気持ちとともに、必要としてくれる人が確実に増えていることを実感します。
小笹●生産量を増やしたくても、ケミカルなものではないので、簡単にはできない。単純に「ヘナ」であれば集めることができますが、ukaは「石垣島でつくる農薬も化学肥料も一切使わないヘナ」。サプライチェーンとしては、自分たちの首をしめていると言われてしまうかもしれませんが、そこは妥協できません。