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第2章100%子会社化で広がった裁量、明確になった責任

「2年後に僕がいなかったら、
“クビになったんだな”と思ってください(笑)」

2026年2月、熱海で行われた幹部合宿。阿部さんがM&Aを検討していることは、この時点では幹部社員にも明かされていなかったという

M&Aに際して、どのような相手と話を進め、そのなかでヒューリックを選んだ決め手は何だったのでしょう。

実は、動き出すまで、自社の買収を打診されたことは一度もなかったんです。「どこか連絡してきてよ!」と思っていたくらいで(笑)。いざ動くと、PEファンド(投資ファンド)の方々が、かなり前のめりで事業の成長性を高く評価してくれました。ただ、事業会社ではヒューリック以外とは話していません。

最終的にヒューリックと組むことにした決め手は、事業シナジーと資金、そして人柄です。あと、意思決定が引くほど速い(笑)。僕たちスタートアップと同じか、それ以上の速さ。プライム上場企業でこのスピード感は、経営者としてすごく勉強になると思いました。

ヒューリック本体の社員数は、わずか230人ほど。それでいて、純利益は約1,100億円。ちょっとバケモノみたいな会社なんです。

ヒューリックは不動産を主力とする企業です。今後は、ヒューリックの物件への出店も進めていくのでしょうか。

そうですね。彼らの物件に集約させたほうが、効率もいいので。特に敷金は、家賃の6〜10カ月分を預けることが多く、サロウィン全体の敷金は約17億円にもなります。敷金を家賃1カ月分、あるいはゼロにできるだけで、自社で回せるキャッシュフローは大きく変わります。

ほかに、ヒューリックと組んだからこそ進められることは?

物流と調達です。ヒューリックは倉庫も持っているので、将来的には倉庫機能を統合したいですね。いまはディーラーやメーカーごとに発注画面が違い、カラー剤1本だけが段ボールに入って届くこともある。配送効率が悪いし、サステナブルでもありません。一括配送できればコストが下がり、その分をスタッフの給与に還元できます。

ただ、「在庫を見られたくない」「発注データを取られたくない」といった各社の利害がある。いま、メーカーさんやディーラーさんと話していますが、全然進まないですね。正直、理解できないことも多々あります。そこは3年、5年と、めちゃくちゃ時間をかけて変えていきたいです。

M&A後、阿部さんご自身の立場はどう変わりましたか。

引き続き、サロウィンの社長です。ただ、親会社との委任契約なので、業績が低迷すれば、社長職を解かれる可能性はあります。2年後くらいに僕がいなくなっていたら、「あぁ、クビになったんだな」と思ってください(笑)。

100%子会社になると、経営の自由度は下がるのでしょうか。

逆ですね。売却前より、桁が変わるくらいの決裁権をもらえています。以前は取締役会を頻繁に開かないと意思決定できませんでしたが、いまは、ほぼ僕の決裁で動かせる状態です。

社内には、いつ、どのように伝えたのでしょう。

完全な極秘事項だったので、幹部社員たちが知ったのはプレスリリース前日の6月22日。翌23日に全社員へ伝えました。みんなポカンとしていました。最初は「ふざけている」と思われて、なかなか信じてもらえなかった(笑)。

多分、僕が辞めると思ったんでしょう。100%子会社になることが良いニュースなのか、悪いニュースなのかも分からない。僕が辞めるわけではなく、みんなもサロウィンの社員のままであることを説明して、「これは喜んでいいニュースなんだよ」と伝えました。

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