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Special Interview

美容業界が描く「女性活躍」のカタチ

花やの前の美容室

代表取締役社長 雨宮健太さん

無料託児所、生産性の向上、
残業させないシステム・・・
異業種から学んだ数々の取り組みで
書籍まで発行した異例の経営者。

山梨・東京・埼玉に10店舗を展開する「花やの前の美容室」は、地元のお客様に寄り添うアットホームなサロン。グループには総勢77名のスタッフが在籍し、うち8割が女性です。妊娠・出産で女性が辞めない会社を目指して、代表の雨宮さんが改革に乗り出したのは約10年前。美容業界で小さなサロンが実現した女性活躍の仕組みを、他の業界でも生かせるようにと、今年6月に現代書林から書籍を発行しました。現在取り組みは波に乗り、企業としての業績も好調に。成果を実感するまでの道のりと、今後の計画を伺いました。

Profile

1976年、山梨県生まれ。山梨県美容専門学校通信科で美容師免許を取得後、他店での修業を経て、お母様の経営する「花やの前の美容室」に入社。2011年、同社代表取締役社長に就任。現在10店舗を経営するほか、全国各地にて経営者の勉強会、学校での講演活動なども広く行っている。2016年6月に著書『女性が働き続ける会社のすごい仕組み』(現代書林)を出版。

女性活躍支援の取り組み

  • 無料託児所を設立
  • 復職時に雇用形態の選択が可能
  • 歩合制を廃止して給与保証
  • 正社員のまま17時に帰れるショートタイム制度を採用
  • 残業をさせないシステム

PICK UP!

上記の中から、一部を抜粋してご紹介します

  • 無料託児所を設立

    正社員からパートスタッフまで、全従業員が無料で利用できる社内託児所を設置。8時~17時30分までオープンしており、各スタッフの勤務時間に合わせて子どもを預けることが可能。基本的には0歳児から年少までを対象とし、土日や保育園の休み期間には年少以上の未就学児も受け入れている。季節ごとのイベントに合わせた制作活動や戸外活動も数多く実施し、ママスタッフたちから評判も高い。

  • 歩合制を廃止して給与保証

    子どもの病気で早退することがあるママスタッフや短時間勤務のパートスタッフにとって、歩合給は不利なシステムと考え、全て固定給に変更。会社を「大家族」として捉え、みんながファミリーの一員として助け合える風土を築き上げた。結果、スタッフみんなで1人のお客さまを担当する「チーム制の接客」が成功し、業績にも好影響をもたらしている。

  • 残業をさせないシステム

    家庭と仕事の両立を図る際に、重要になってくるのが時間の問題。そこでママスタッフをはじめ社員全員に対して、「残業をしない、させない」ことを徹底している。多くのヘアサロンが営業時間外に行う研修や勉強会、撮影会などを、毎週金曜日の午前中に実施。カット練習も営業時間内に行うよう指導している。これにより総労働時間が大幅に縮小し、人時採算がアップ。会社の利益にもつながった。

Q

「女性が働き続ける会社」として、さまざまな仕組みづくりをされています。これまでの道のりを教えてください。

A

妊娠・出産での離職が長年の課題でした。従業員の幸せを考えるようになったことが、解決の第一歩に。

「人が辞めない会社」にするには職人的体制はNG。
制度を整え、とことん企業化することを決意。

 私の母は美容室を経営していて、住込みのお弟子さんもいたため、私は女性だらけの家で育ちました。そこで見てきたのが、妊娠・出産のタイミングでみんな離職してしまうという現実。母の美容室に就職した私は、会社を大きくしようと必死で人を集めましたが、やはり妊娠・出産でスタッフが辞めてしまう状況を長年繰り返しました。
 どうしたら「人が辞めない会社」になるのか。悩んだ末にある本からヒントを得て、「会社としてのシステムを整えていくことが重要」と気付いたのです。これまでの職人的な体制を180度変えて、福利厚生、労務管理をきちんと整備していくことを始めました。

「盛和塾」をきっかけに取り組みを加速化。
同時期に正社員ママのロールモデルも誕生。

 「人が辞めない会社」へのヒントを与えてくれた本というのが、稲盛和夫さん(京セラ、KDDI創業者。JALの再建も手掛けた)の著書でした。その後、社会保険を完備し、労働時間を短縮して、託児所を設立。少しずつ前進していましたが、大きな転換点は稲盛さんが主宰する若手経営者の勉強会「盛和塾」に入塾したことです。これを機に「人として何が正しいか」をより深く考えるように。「従業員の物心両面の幸せを追求する」という経営理念を掲げ、歩合制の廃止、ショートタイム制度の導入など、女性活躍の取り組みを加速化させました。
 託児所は開設してから半年間、利用するスタッフがまったくいませんでしたが、ちょうどこの年に正社員ママ第1号が利用。「産んでも働けるんだ」ということがロールモデルにより実感できたようで、そこから急に妊娠報告と「出産後に復帰したい」というスタッフが増えました。今では8名のスタッフが託児所を利用しています。

開設当初は利用者がいなかった託児所。雨宮さんは、当時妊娠中だった女性スタッフとそのご主人に根気よく入所をお願いし、正社員ママ第1号の利用を実現させた

Q

現在までの取り組みを振り返ると、一番大事なポイントは?

A

時間を明示し、短時間で生産性を上げる意識を高めたことです。

覚悟を決めて労働時間を明示。
残業させないシステムを定着させる。

 当社は女性スタッフが8割を占めていて、働く際にネックになってくるのは、やはり時間だと思うのです。特に美容師を選択するような女性は、奉仕の心が根底にあるので、家庭のことも大切にします。彼女たちが働きやすい環境をつくるために、労働時間の短縮を徹底しようと考えました。
 まず試みたのは、タイムカードでスタッフたちに時間を明示すること。美容業界では、1日11~12時間労働が一般的です。それを明るみに出すのは怖かったのですが、会社の未来のために覚悟を決めました。「タイムカードを押したらすぐに帰る」という文化は、現在ではしっかり定着しています。

短時間でも生産性を上げるために
「予約のコントロール」を実施。

 時間短縮を推し進めながら、採算を高めるにはどうしたらよいか。そう考えて始めたのが、予約のコントロールです。お客さまがお帰りになる際に、次回の提案をして、次回の予約を入れていただく。ゲームのテトリスのような感じで、自分のスケジュールに合わせてその予約を詰めていくのです。上手に埋まれば、労働時間の短縮につながりますし、出勤時間も柔軟にできます。

挑戦的な取り組みは、
まず経営者が率先してやって見せる。

 次回予約を促進するために、インセンティブもつくりました。次回予約比率が25%を超えたら1日休みを付与、40%を超えたら週休2日に、さらに上がれば完全週休2日にしよう、など。しかし口で言っているだけではスタッフに理解されません。そこで私自身が現場へ立って、あたかも簡単そうにやって見せることにしました。本当は必死でしたが、9時~15時の短時間出勤で結果を出したことで、スタッフたちが後に続いてくれるようになったのです。

「次回予約を上手に詰められれば、時間をコントロールできるようになります」と雨宮さん。この頃から金曜のナイター営業を開始し、仕事帰りのお客さまの利用をそこに集中させる仕組みをつくった

美容業界をはじめ、女性が求められる各業種の経営者に向けて上梓された、雨宮さんの著書

Q

この先、取り組んでいきたいことを教えてください。

A

従業員の環境を一層よくして、「入りたい会社」にしていきたいです。

技術者以外の役割・役職も用意して
復帰後も給与が上がる仕組みをつくる。

 事業展開もいろいろ構想はありますが、それよりも内部充実をもっと図っていきたいです。給与や労働条件など、他業種と比べて悩むぐらいによくしてあげたい。
 例えばママスタッフの復帰後の環境を考えると、今はまだ、復帰前の給与額を保証される仕組みしかありません。それだけではなく、復帰後はナレッジワークで給与が上がっていく仕組みをつくりたい。当社ではチーム制の接客を取り入れていますが、カット担当者がスタイルに悩んだ時に、助言を与えるアドバイザーなど。職人であるスタッフたちの上位職として、ハサミを置いた後もしっかり稼いでいけるような、そういう仕組みをつくりたいです。

独身スタッフや男性スタッフも
応援できる制度づくり。

 女性活躍の取り組みを進める中で、独身スタッフから「既婚者には優しいけれど、独身者には冷遇」なんて言葉が出たこともありました。最近はそのスタッフたちと電話したり食事に行ったり、よく話を聞くようにしています。どの立場のスタッフでも、気持ちよく働ける環境であることが「人が辞めない会社」の根幹。なので、例えば視野拡大のために海外旅行へ行くと言うならば、その際の交通費の手当てや休日の付与など、独身スタッフを応援する制度も考えています。同様に、男性スタッフのための制度づくりも進めていきたいです。

「人が辞めない会社」を実現したら、
次は「入りたい会社」へ。

 目指していた「人が辞めない会社」を実現しつつあり、今度は「入りたい会社」にしていかなければと思っています。そこで重要になってくるのは、利益の使い道です。儲かった分、ちゃんと従業員に還元していくこと。そして初任給を地域で一番にして、まずは求職者の選択肢に入っていくこと。「知名度はないけれど、給与が一番いいからとりあえず面接の席には座ってみよう」と。そうやって入社のきっかけづくりをしながら、会社のお金がどのように使われているのか、従業員に明示する努力を進めていきたいです。

「美は健康と共にある」という考え方から、フィットネスジムも経営されている。今後も美をテーマにしながら、健康、介護などの方面への事業展開を計画中

 女性に囲まれて育ち、女性スタッフのマネジメントを重ね、女性の特性をすっかり把握されている雨宮さん。インタビュー中には、「やはり結婚する時には、嫁ぎ先が安心できるところかどうかが気になるでしょう」というような、女心を捉えたお言葉も多々あり、本当に女性の気持ちに寄り添ってくださる経営者なのだと実感しました。
 そんな繊細な印象とは裏腹に、学生時代は剣道部で、会社の運営も当初は体育会系の勢い。体制改革を決意した時には、スタッフ一人ひとりを直接口説いて回ったというバイタリティ溢れる一面も。優しくて頼れるオーナーは女性の憧れです。短い取材時間でしたが、大勢の女性スタッフが雨宮さんを慕い、ここまでついてきた理由がわかるような気がしました。
インタビュアー
齋藤陽子(ホットペッパービューティーアカデミー主席研究員)
編集・取材・文
加藤愛
撮影
森若匡

※掲載されている情報は2016年07月22日現在のものです

Company Data

有限会社 花やの前の美容室

創業年
1990年
店舗数
10店舗
会社URL
http://hanayanomae.com/
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