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訪問美容~データ&実例編~

超高齢化社会を迎え、サロンの潜在市場として注目される “訪問美容”。
データや実践事例を交えて訪問美容の可能性について考えていきます。

vol.50

実例編60代スタッフが活躍!創業60年超サロンの訪問美容

創業60年を超え、京都で5店舗を構える老舗サロンの「Marry's」グループ。約40年前からボランティアで養護施設の訪問美容をしていました。現在はビジネスとして5名のスタッフがサロンと訪問美容を兼任しています。近い将来、移動美容車の導入も予定しているそうです。代表取締役の中嶋慎悟さんと、訪問美容スタッフでもあるマネジャーの中嶋英美さんにお話を伺いました。

Marry First

  • 全スタッフ20名
  • 5店舗
代表取締役:
中嶋慎悟さん
訪問美容開始:
1980年ごろ
訪問施設数:
2施設(うち1施設は病院)
施設訪問頻度:
1カ月に1回
訪問個人顧客数:
約20名
個人顧客訪問頻度:
1カ月に1回
訪問スタッフ:
5名(兼任)
価格:
カット3,000円〜

Q

ビジネスとして訪問美容を始めたきっかけは?

A

高齢になったサロンのお客さまからの要望でした。

高齢化社会で訪問美容は必要とされる事業と考えています。

中嶋慎悟さん(以下、慎悟さん):「Marry’s」は私の母が創業したサロンで、私は2代目として1989年から代表を務めています。自分自身は元銀行員で美容師ではなく、経営に専念しております。訪問美容は先代の頃に、地域の養護施設からの依頼でボランティアで行っていました。当時は若手スタッフの技術向上も兼ねていたようです。
ビジネスとしての訪問美容を始めたのは20年ほど前です。「Marry’s」は長くご利用いただいているお客さまが多く、高齢のためサロンに来られなくなった方から「自宅にカットしに来てほしい」とのご依頼があったのです。その頃から、今後の高齢化社会では訪問美容が求められるようになると考え始めました。また、当社は長く勤務してくれているスタッフが多い特徴があります。就業規則上では定年を65歳としていますが、私としては本人が希望する限りずっと働いてもらいたいと考えています。そのときにベテランのスタッフの働き方の一つとしても訪問美容は適していると思い、本格的に訪問美容を始めることにしました。

訪問美容を始めるために、スタッフと研修を受けに行きました。

中嶋英美さん(以下、英美さん):当時、美容連合会からハートフル美容師の研修のお知らせを受けていました。訪問美容をやるなら基礎的な知識が必要だと思い研修を受けることにしたのです。スタッフにも参加を呼びかけたところ、4名が手を挙げてくれました。現在、訪問美容師として活動しているのは、そのときに研修に参加した4名と私の、計5名です。1名は40代、あとは全員60代以上で、「Marry’s」で長く勤務し活躍してくれているスタッフです。たまたまですが、「Marry’s」の5店舗から1名ずつ参加したので、各店舗に訪問美容師が存在できるようになりました。私自身はヘルパー2級(現:介護職員初任者研修)の資格も取得しています。

  • 代表取締役の中嶋慎悟さんと、マネジャーの中嶋英美さんは実はご夫婦。夫は経営、妻は現役のスタイリストとして「Marry's」を率いている

  • 美容連合会で訪問美容研修を受けたときの修了証。寝たきりの方のシャンプー方法など基礎的な知識と技術を学んだ

Q

現在訪問している施設やお客さまは、どのように獲得しましたか?

A

営業はしておらず、紹介が中心です。

銀行の担当者から、新規で開設される施設の紹介を受けました。

慎悟さん:今までは幅広い展開は考えていなかったため、特に営業はしていませんでした。定期的に訪問している介護施設は銀行からの紹介でした。京都では小規模の介護施設が増えています。その施設は「利用者さまを募集するにあたって特色を出したい」とのことで、訪問美容師が来ることが施設の強みとなるとお考えになり、銀行に相談していたようです。また、直接依頼があり、不定期で訪問している病院もあります。個人宅のお客さまは、もともと各店舗のお客さまだった方が多いですね。訪問美容を始めた当初は地域のケアマネジャーさんにもお声をかけていたので、ケアマネさんからご紹介いただいたお客さまもいらっしゃいます。

  • ご家族や知人に介護が必要な方がいらっしゃるお客さまの目にとまるよう、サロンにも訪問美容のチラシを置いている

高齢者施設以外でも訪問美容のニーズはある。

慎悟さん:不定期で訪問している施設のなかに、放課後等デイサービスがあります。障がいをもつ子どもたちが、放課後や長期休暇のときに利用している学童のような施設です。刃物を怖がったり、不特定多数のお客さまが集まるサロンに行くことが困難な子どもたちがいるため、デイサービス側からの要望で昨年から不定期にお邪魔しています。職員の方々としては、彼らがキレイにしてもらうことで喜びを感じ、外に出かけたり、「サロンに行きたい」と思って一歩踏み出すきっかけにもなればとお考えとのことです。高齢者に限らず、こうしたところにも訪問美容のニーズがあるのだと知りました。

Q

実際に訪問美容をやってみた感想は?

A

サロンと同等のことはなかなかできない課題はあります。

恐縮するほど喜んでいただけることがやりがいにつながります。

英美さん:やってみてよかったのは、こちらが恐縮するほど喜んでいただけることですね。キレイになって喜んでくださる姿を見ると、女性はいくつになっても容姿を整えていたい想いがあることを改めて感じます。また、サロンでは話しにくい悩みなど、いろいろなお話を聞かせていただけるのも訪問美容ならではだと思います。大変なのは、限られたスペースで施術を行うため、サロンと同様にはなかなか施術ができないことです。京都市内は駐車スペースの確保が難しく、個人宅に車で訪問しにくい場所です。そのため、現状では移動式シャンプー台は使っていないため、メニューはカットのみにしています。また、サロンの営業日に訪問美容も入れるので、施設が通勤途中にあるスタッフが担当したり、近隣のお宅には自転車で通ったりしています。

  • 車イスの方の施術はスタイリストにとっては重労働となるが、その分喜んでいただけることがやりがいにつながっている

Q

今後は訪問美容をどのように展開してきたいとお考えですか?

A

移動美容車を導入し、メニューを広げていく予定です。

移動美容車で高齢者以外にも訪問美容を必要とする方のもとへ伺いたいです。

慎悟さん:実は今、移動美容車の導入を予定しており、専用トラックの納品待ちです。コロナ禍でサロンにお客さまが来られなくなったときに、移動美容車での訪問美容を思いつき、中小企業庁の事業再構築補助金を受けられることになりました。移動美容車にはシャンプー台や、車いすのまま乗れるリフトも付いていますので、カラーやパーマのご要望にもお応えできるようになります。
移動美容車があれば、さまざまな介護施設に営業をかけやすくなりますし、山間部などサロンや訪問美容師が少ない地域にも行ってさし上げることができるようになります。高齢者だけでなく、前述の放課後等デイサービスで障がいのある子どもたちや、育児中の方々など、訪問美容を求めている方すべてのもとへ伺えるようになれたらと考えています。また、地元の議員の方から、移動美容車は震災時にも活躍すると言われているので、将来的にはそうした利用法も視野に入れています。

  • コロナ禍の経験から移動美容車でできる訪問美容の可能性に期待を寄せている中嶋さん

中嶋さんからひとこと

訪問美容を専門としている企業もあるので、サロンが参入して売上を増やしていくには根気が必要かもしれません。それでも、売上以外での価値があるとも考えています。ひとつはサロンワーク以上にお客さまから感謝の言葉をいただけることで、スタッフのモチベーションがあがることです。また、高齢者の方のご家族がサロンのお客さまとして来てくださることもあります。そして、スタッフの働き方の選択肢になることです。スタイリストは年齢を重ねていくと、新規の指名をいただくことが難しくなる事実があります。弊社は65歳が定年ですが、それを超えても自分のペースで働くことが可能です。スタイリストが生涯活躍できる場としても、訪問美容は有効な場ではないでしょうか。

Salon Data

Marry First 【マリィファースト】

アクセス
京阪出町柳駅から徒歩7分
創業年
1961年
店舗数
5店舗
設備
セット面5席
スタッフ数
20名(全店舗)
URL
https://beauty.hotpepper.jp/slnH000167282/
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