Vol.1/美容業界の常識は社会のヒジョーシキ!?
- サロンの労務知識
美容の未来のために、学びと調査・研究を
サロンオーナー必見!
須多井 リスオ(スタイ リスオ)
小尾奈 サロヒコ(オオナ サロヒコ)
赤出 ミーコ(アカデ ミーコ)
秋田センセイ
ビューティー
健康保険はみなさんにもなじみがあると思います。病院などに行った際、受付で提出を求められるのが「健康保険証」ですね。健康保険は医療費を支払う際に自己負担が軽減される公的な保険です。
健康保険には大きく分けて2種類あり、会社などの組織で入る「健康保険」と、個人で入る「国民健康保険」があります。(*このページでは、「①総称としての健康保険」と、「②会社などの組織で加入する健康保険」を区別するため、②の場合に「健康保険」とカッコ付きで表記します。)
サロンの場合どちらに入るかは、法人登記しているか否かで異なります。
●サロンが法人の場合
サロンが株式会社や有限会社など法人登記している場合は、オーナーひとりで経営していても、会社などの組織で入る「健康保険」への加入が義務づけられています。
●サロンオーナーが個人事業主の場合
オーナーが個人事業主である場合は「健康保険」の加入は任意となります。通常は個人事業主でも5人以上雇っている場合は「健康保険」への加入が義務づけされていますが、美容業は強制適用ではない業種のため、任意加入となります。事業所としての「健康保険」への加入は任意でも、国民はいずれかの健康保険に加入する義務があります。そのため、事業所として「健康保険」に加入しない場合は、オーナーもスタッフもそれぞれで「国民健康保険」に加入しなければなりません。
サロンが法人の場合、正社員のスタッフは必ず加入させる義務があります(ただし、夫や親の「健康保険」の扶養になっているなど被保険者でない人は除きます)。しかし、時間限定のパートなどのスタッフは、働いている条件によって「健康保険」に加入できる場合とできない場合があります(下記の条件参照)。
●労働時間による条件
正社員であるスタッフの1週間の労働時間の、概ね3/4以上の労働時間があることが条件です。例えば正社員が1週間で40時間働いている場合は、原則としてパートスタッフは30時間以上勤務すればサロンで「健康保険」に加入しなければなりません。
●雇用期間による条件
2カ月以内の期間を定めて雇用する者は、被保険者から除外されます。よって、雇用契約期間は2カ月を超えていることが必要です。
これらの条件を満たしていれば、パートでもアルバイトでもサロンで「健康保険」に加入させなければいけません。
上記の条件を満たしていないスタッフには、「国民健康保険」に入るよう伝えてください。ただしそのスタッフが夫や親の扶養になっていて、健康保険も扶養扱いになっている場合は別です。
法人であるサロンが「健康保険」に加入するには、所在地の管轄の年金事務所で申請します。加入義務のあるスタッフを採用するたびに申請手続きをしなければなりません。
「健康保険」の保険料は、事業主と従業員が折半で負担します。保険料は、従業員ごとの給与によって、また事業所のある都道府県によって毎年料率が異なります。令和4年度の保険料の目安は、全国平均で約10%です。
※令和4年度(2022年3月~2023年2月)に料率が10%の場合(料率は年度、都道府県によって異なる)。
例:月収が30万円のスタッフの場合
月々の保険料:約3万円
負担の内訳:事業主1万5,000円、従業員が1万5,000円
一方、個人事業主で「国民健康保険」の場合は、前述のように事業主も従業員も、それぞれ自分で、住んでいる自治体の役所で加入手続きをします。保険料率は各市町村によって異なります。「国民健康保険」の保険料は全額本人負担です。
「健康保険」の場合は、保険料は事業主が毎月、管轄の年金事務所または健康保険組合に納付し、従業員負担分は毎月の給与から天引きして徴収します。「国民健康保険」の場合は、それぞれの自宅に自治体から納付書が届くので、個人で納付します。
次号では、もうひとつの社会保険の「厚生年金保険」について解説します。
監修
特定社会保険労務士
秋田繁樹さん
プロフィール:
社会保険労務士法人 秋田国際人事総研代表。東京都社会保険労務士会所属。国内大手生命保険会社、大手企業のシステムインテグレーターなどを経て、独立開業。人事労務のスペシャリストとして、多店舗展開の美容室の労務管理や就業規則・社内規定などにも詳しく、多数の美容室の指導相談に当たっている。http://www.akita-sr.com/
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