サロンオーナー必見!

人を雇ったら知っておきたい
労務のキホン

スタッフを雇ってサロンを経営していく上で必要な、労務関連の制度や法律の基本知識について解説していきます。

vol.16

〜雇用形態について正しく知ろう編〜

正社員とパートって実際何が違うの?

みなさんのサロンでは正社員とパートをどう分けていますか? そもそも正社員とパートは何が違うのでしょう? 今回はさまざまな雇用形態について解説します。
※青文字・下線が付いた箇所をクリックすると、その言葉の説明が見られます。

連載ショートストーリー

「サロンRの日常」16
  • 須多井 リスオ

    須多井 リスオ(スタイ リスオ)

    アシスタントを2年経験し、スタイリストデビューをしたばかりの23歳。「サロンR」勤務。デビューして意気揚々。オーナーも店も基本大好きで、サロンとともに成長したいとはりきっている。
  • 小尾奈 サロヒコ

    小尾奈 サロヒコ(オオナ サロヒコ)

    「サロンR」オーナー。スタイリストとして7年間別のサロンに勤務した後独立。「サロンR」を開業して3年目の33歳。スタッフを大事にしてサロンを成長させたいが、経営の知識はない。
  • 赤出 ミーコ

    赤出 ミーコ(アカデ ミーコ)

    「サロンR」に勤務するスタイリスト歴5年の須多井リスオの先輩。27歳。指名が多く、新婚で公私ともに絶好調。同僚からの信頼も厚いが、結婚を機に子どもがほしいと考え始めている。
  • 秋田センセイ

    秋田センセイ

    社会保険労務士。多数のサロンの労務管理相談を受けている、この企画の監修を担当。美容業界を他業界に負けないくらい、オーナー、スタッフともに働きやすい環境にしたいと考えている。
  • ビューティー

    ビューティー

    秋田センセイの名アシスタントの猫。先生の言いたいことを伝言するために、ここそこに現れるこの企画の陰のキーマン。サロンオーナーたちがいい経営者になることを心から願っている。
同じ労働時間でもパートと正社員ってアリなのでしょうか?
POINT1

雇用形態は大別して、「期間が定められている」か「定められていないか」のふたつ。

『正社員』は実は俗称だよ

 世の中には「正社員」「パート」「契約社員」「アルバイト」など、さまざまな働き方があります。まず理解しておきたいポイントは、労働基準法で雇用形態は、「雇用期間が定められている」か「定められていないか」の2種類に大別されているということです。
 ●雇用期間が定められている人⇒非正規雇用者(パート、アルバイト、契約社員など)
 ●雇用期間が定められていない人⇒正規雇用者(いわゆる正社員)

 「パート」「契約社員」など、非正規雇用者の中での違いは以下のような内容があります。

◆契約社員
 正社員と違って、労働契約にあらかじめ雇用期間が定められている社員のこと。期間の定めのある労働契約は、労働者と使用者の合意により契約期間を定めたものであり、契約期間の満了によって労働契約は自動的に終了することとなります。1回当たりの契約期間の上限は一定の場合を除いて3年です。

◆パートタイム労働者
 1週間の所定労働時間が、同じ事業所に雇用されている通常の労働者(正社員など)と比べて短い労働者をいいます(パートタイム労働法では、「短時間労働者」といいます)。「パートタイマー」や「アルバイト」など、呼び方は異なっても、この条件を満たせばパートタイム労働法上のパートタイム労働者となります。

ほかにも「派遣労働者」や「短時間正社員」などの雇用形態があります。
※雇用形態の種類と違いについて詳しくはこちらをご覧ください。

正社員やパートの違いはサロンでどう決めればいいの?

 雇用形態の違いによる呼び名は、サロンごとに決めればいいことです。ただし、それを就業規則で明確にしておく必要があります。「正社員は所定労働時間が何時間で、給与体系や休日・休暇はどうなっているのか」、「パートや契約社員の場合はどうか」など、雇用形態の種類ごとの労働条件を定めておかなければならないのです。もちろん就業規則の基本は、労働基準法に則した内容でなければなりません。

POINT2

パートの社会保障は、保険の種類によって決まる。

パートでも必須の保険があったね!

 上記のように、「正社員」、「パート」、「契約社員」は労働契約の期間や、所定労働時間によって分けられるものです。注意しなければならないのが労働保険社会保険などの社会保障。「パートだから社会保障に入れなくてもいい」ということはありません。
 保険に加入させるべきかどうかは、各保険での規定によります。簡単におさらいしておくと、以下のようになります。

【労働保険】⇒サロンは法人でも個人事業主でも加入が必須。
労災保険…パートでも加入が必須。(詳しくはVol.5へ)
雇用保険…パートは労働時間や雇用期間などの条件付きで加入。(詳しくはVol.6へ

【社会保険】⇒サロンは法人は加入が必須、個人事業主かつ法定16業種以外の場合は任意(つまりサロンは任意加入となります)。
健康保険…パートは労働時間や雇用期間などの条件付きで加入。(詳しくはVol.7へ)
厚生年金保険…パートは労働時間や雇用期間などの条件付きで加入。(詳しくはVol.8へ)

産休・育休明けのスタッフなどがパートを希望したら?

 育児休業から復帰するスタッフが、フルタイムで働けないことから、正社員としての短時間勤務制度ではなく、パートを希望するケースがあります。パートになることによって上記の社会保障の適用外になる可能性もあるので、パートとしてどれくらいの時間働けるかを確認し、適用外になる場合はそれぞれの保険ごとで手続きが必要になります。子育てから手が離れて正社員に戻す場合も同様です。

POINT3

「業務委託」の人には、原則仕事の指示はできない。

業務委託は要注意ポイントです

 サロンで気をつけたい形態が「業務委託」です。業務委託契約を結んで働く人は、正社員やパートなど「オーナーが雇用している労働者」とは別で、「注文主(サロンやオーナーなど)から受けた仕事の完成に対して報酬が支払われる」人々です。フリーランスのスタイリストなど業務委託の人は、その人自身が事業主として存在しているので、サロンで社会保障に入ることもありません。
 気をつけるべきポイントは、業務委託の人をサロンの「労働者」と同様に働かせてはいけないということです。たとえば、「労働者」とは「仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由がない」人のこと、つまりサロンから仕事の依頼や指示をされたらそれに従う人のことをいいますが、業務委託の人はこれに当てはまりません。また、業務委託の人の時間をサロンの都合で拘束すると労働者として判断される可能性が高まります。
 サロンの「労働者」として雇用しているスタッフと同様に働かせる場合は、業務委託でなく雇用して、社会保障などオーナーがきちんと責任を取らなければならないということです。

業務委託の人にサロンのスタッフと同じように働かせたら何が問題?

 業務委託契約者は注文主(サロンやオーナーなど)の指揮命令を受けない「事業主」として扱われ、基本的には「労働者」としての保護を受けることはできません。ただし、業務委託契約をしていても、その働き方の実態から「労働者」であると判断されれば、労働法規の保護を受けることができます。つまり、「雇っているのだから、その人に支払うお金は給与」と見なされ、他のスタッフと同様に所得税の源泉徴収をしなければならないなど、オーナーの義務が変わってくるのです。

今回のポイント

世の中全般で、非正規雇用者が増えて労働者の雇用が守られにくくなっているため、労働に関する法律は労働者を守る方向に改正されてきています。スタッフが安心して働くことがサロンの発展にもつながります。そのためにも、それぞれの形態で決まりに則して雇用をしましょう。

次号では、正社員、パートなど、さまざまな雇用形態の違いについてお伝えします。

秋田繁樹さん

監修

特定社会保険労務士

秋田繁樹さん

プロフィール:

社会保険労務士法人 秋田国際人事総研代表。東京都社会保険労務士会所属。国内大手生命保険会社、大手企業のシステムインテグレーターなどを経て、独立開業。人事労務のスペシャリストとして、多店舗展開の美容室の労務管理や就業規則・社内規定などにも詳しく、多数の美容室の指導相談に当たっている。http://www.akita-sr.com/

編集・取材・文
長島佳子
イラスト
木村𠮷見

※掲載されている情報は2016年07月11日現在のものです

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