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イノベーターが
見ている未来

vol.85

確固たる世界観を持ち、新しい取り組みをしている「次世代リーダー」へのインタビュー。
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。

オトコネイル

代表取締役 坂下隆子さん

メンズネイルというニッチ分野で成功!
リピーター約9割を誇る、教育メソッド。

“男性専用のネイルサロン”。そのパイオニア的存在とも言える、2012年創業の「オトコネイル」。いま以上に男性向け美容が珍しかった10年前、無謀だと言われながらも男性の身だしなみとしてのネイルケアの可能性にかけて専門サロンを起業した坂下さん。コロナ禍でも業績を伸ばしている秘訣や、メンズネイル市場への想いをうかがった。

坂下隆子(さかした たかこ)さん:「株式会社オトコネイル」代表取締役。石川県生まれ。東京理科大学卒業後、証券会社に勤務。退職後の準備期間を経て、2012年9月に男性用ネイルケアサロン「オトコネイル」1号店を創業、2014年に株式会社オトコネイルを設立。現在は都内に5店舗、大阪に1店舗を展開している。
https://otokonail.com/

第1章前例のないメンズネイル創業期

「お客さまはまったく来ません(笑)。
来てもらうために3,000件くらい電話しました」

コロナ禍で、集客の影響はいかがでしたか?

感染者数の増加や緊急事態宣言で影響は受けましたが、創業から10年を迎えて現在のお客さまはリピーターが約9割。なので、そこまで売上に影響はありません。おかげでコロナ禍前と比べても業績は順調に伸びています。

驚きのリピーター率です。坂下さんはメンズネイルというニッチな市場で2012年に起業されましたが、その前は証券会社にお勤めで、そもそも理系の大学出身でネイリスト経験もない、という異色の経歴ですね。

私は石川県の田舎町出身で、祖父も父も警察官、母親は箱入り娘の教育ママ。「県内で一番の高校に行けば一生安泰」という価値観が根付いた、保守的な環境で育ちました。言われるがままに県で一番の進学校に進んだものの、「このままでいいのか?」と疑問を抱くようになって。それで地元に近い関西圏の大学に進むお決まりのコースではなく関東の大学にしようと考え、どちらかというと理系が好きで、学歴的に親が文句をつけないだろうという観点で大学や学部を選んだんです。

進学後にひとり暮らしを始めて改めて自分の人生を考えたとき、サラリーマンとしてどこかにずっと勤める普通の将来に夢を感じなくて。ひとまず学歴的に親の期待には応えたし、もういいんじゃないかと(笑)。そんなころに『金持ち父さん 貧乏父さん』を書いたロバート・キヨサキの妻であるキム・キヨサキの著書『リッチウーマン』を読んだんです。実業家であり投資家でもある彼女の本を読んで、「将来は自分も起業しよう」と考えるようになりました。

大学卒業後、証券会社に勤めたのは起業に向けた勉強のため?

経済のことやお金のことを知りたかったのと、最初は厳しい会社で3年間は勤めようという考えからです。その環境を乗り越えられなければ、起業するなんて無理だろうと。さまざまな企業経営者の方との人脈も作れますし、がんばれば給料も上がって起業資金が貯められるなという思惑もありました。

では予定通り、3年後に退職して起業されたのですか。

激務で体調を壊してしまい、退職したのは3年経つ少し前ですね。辞めた後にすぐ起業したわけではなく、1年ほどは知り合いの会社を手伝ったりしながら過ごしました。というのも、起業したいと思いながらも何をするかまでは固まっていなくて。あと私が入社する前年にリーマンショックが起きたためボーナスが出ず、起業資金も貯まっていませんでした。

そんなある日、証券会社時代にお世話になった70歳の男性のところへご挨拶にうかがいました。「起業する分野を決めかねている、ネイルに興味はあるけど飽和状態だし…」と話したところ、「じゃあ僕の手をやってよ」と言われたんです。

「えっ何を言っているんだろう!?」と思いましたが(笑)、手を拝見すると爪の先までピカピカ。指先まで気を配っているから、70歳でも第一線で活躍するほど仕事ができるのだと衝撃を受けました。それで、“男性もネイル”という発想が生まれました。とはいえ経営ノウハウは何もない状態。証券会社時代に知り合った経営者の方にアポを取り、「経営について教えてください!」とお話をうかがいに行きました。

ネイリスト経験がない点についてはどう考えていたのでしょう。

これは経営論を教わった際に聞いたのですが、「経営者と技術者は別ものだ」と。その点を教わったことはいまでも感謝しています。個人事業と経営者をごっちゃに考える方もいるでしょうが、私が何をしたいかというと「経営」です。なので経営については学ばなくてはいけませんが、ネイル技術を身につける必要性は感じませんでした。

「オトコネイル」1号店をオープンして、順調に進みましたか?

順調なわけがありません、お客さまはまったく来ません(笑)。ネイリストとビラ配りする日々ですよ。やっとお客さまが来店しても、設定した時間内にケアが終わらない。ともかくお客さまを呼ぶために過去に仕事でご縁のあった方などに片っ端から連絡して…、 結局3,000件くらいは電話したかな。来てくださった方に、最初は60分無料や500円でネイルケアを体験してもらいました。

経営者の方を尋ねたり電話をしたりと、バイタリティがすごいですね!それは証券会社時代に鍛えられたんでしょうか。

そうですね、根性が鍛えられたのはあります(笑)。でも振り返って思うのは、「知らないって強い」ということ。10年前の自分が一番最強だと思います。今の知識と経験があったら、逆にできなかったかもしれません。

最初は知り合いに声をかけて、その後はどう集客を?

最初の月はお客さまが来なくて、翌月は電話して来てくれた知り合いだけという状態。来てくれた方にはアンケートを行い、メニューの内容や所要時間といったニーズを探って改善していって。そうするうちに3カ月目に日経新聞の取材があり、男性向けネイルサロンということで記事が載ったんです。すると掲載後からはすごい電話が来て、一気に予約が埋まりました。その後も多くのメディアに取り上げていただいたことで、認知度が上がってお客さまも増えていきました。

とはいえ3カ月目、4カ月目は予約で満席になっても、5カ月目にはお客さまが前月の3分の2くらいに減ったことも。とにかく迷ったときは、お客さまに聞く。電話して、ご意見を反映していきました。聞き取りの過程では、「次はいつ行けばいいかわからないよ」とも言われて。「あ、そうか。次回予約はこちらからおすすめしなきゃいけないんだ」と気付いて、スタッフに声をかけるように伝えたり。リピーター戦略も考えていない、そんなスタートでした。

「迷ったらお客さまに聞く」姿勢を徹底されたんですね。

ケアや接客対応、椅子の配置から照明の明るさといった細かい点までご意見を聞いて、言われたことはすべて改善していきました。いまも生き残れているのは、そうした「接客力」にあると考えています。

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