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イノベーターが
見ている未来

vol.59

確固たる世界観を持ち、新しい取り組みをしている「次世代リーダー」へのインタビュー。
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。

ORO

伊藤 修平さん (age.33)

落ちこぼれは誰一人つくらない。
時代に逆行する、厳しい教育?

2014年創業。現在は美容室を大阪中心に国内外7店舗(うち5店舗はアイラッシュ併設)を展開する「ORO(オーロ)」。2020年10月、本店の美容室と同ビル内にオープンしたフィットネスジムも話題に。その店舗展開の根底にある、代表 伊藤さんのスタッフへの想い。そして「今どき珍しいくらい厳しい」と語る、教育カリキュラム・採用とは?

伊藤 修平さん/株式会社オーロ 代表取締役。1987年、兵庫県生まれ。大阪市内1店舗を経て、26歳でOROを創業。2017年以降は、リピーターのお客さまのみサロンワークも続けている。
https://www.oro-beauty.jp/

第1章美容室がジムをオープン?

「ジムでの利益は求めない。
美容室の失客を防ぐため。」

同じビルの1階に美容室(豊中本店)、5階にジムがある

現在の店舗展開について、教えてください。

うちは、美容室とアイラッシュのトータルビューティーに加えて、美容室に自社で運営する認可外保育園または託児所を併設しているのが特徴です。OROのターゲットは、20~30代の主婦・OL。そういったお客さまが使いやすくなるのはもちろん、スタッフである女性美容師が出産後に復帰しやすいように、というのもあります。

1店舗目を、豊中に出店した理由は?

大阪の豊中エリアは、梅田駅から電車で12分、閑静な高級住宅街です。美容室の激戦区である「梅田」「心斎橋」に比べてお客さまの流動性が低く、10年・20年単位で勝てるエリアです。豊中に住んでいて、今までは梅田のおしゃれな美容室に通っていた人に、「地元にこんなにおしゃれなサロンがあるなら、ここに通いたい」と思ってもらえるよう、外観・内装にもこだわっています。また20~30代で美容に興味はあるけど、子どもがいてなかなか美容室に行けない人もターゲットです。なので、美容室に認可外保育園を併設して、同時オープンしました。7年前の当時、豊中には待機児童が300人。自分の商売だけで考えたわけではなく、地域にとって必要な店になるには、地域に貢献することが大事だと思ったからです。

僕は、「理由のない流行」って、絶対続かないと思うんです。3年で9割の美容室がつぶれるといわれている業界。じゃあ1割に残るには、お客さまが通い続けたい内装、技術は当然。プラス、保育園事業をひとつの武器に使いたかった。今も、出店地域に合わせて、必要なところには保育園または託児所を併設しています。

さらに昨年、ジムをオープンされたのは驚きでした。

2020年10月に、美容室と同じビル内にフィットネスジムをオープンしました。ジムを使っている間は、OROの保育園で一時託児も利用できます。これは、「美容室に通うお客さまのさらなる美容意識の向上」のためです。ジムに行こうとすると、まずおしゃれなウェアを買う。ジムに来ているおしゃれな人を見て、美容意識が上がる。もっときれいになりたいと思う、さらに美容室に通う、という好循環を生みます。

ジムで鏡を見て「小顔になりたい」と思えば、いちばん手っ取り早いのは髪形を変えること。結果、美容室への来店も増えます。お客さまが美容室を変える理由でいちばん多いのは「なんとなく」。もはや美容室の施術や接客だけで、流出を食い止めることはできません。だからOROでは、「行かなきゃいけない理由」をたくさんつくって流出を防ぐ。ジムや保育園はその一環です。

ジムは内装が豪華で、マシンもグレードの高いものだそうですね。

内装費には、相場の約2倍かけています。20~30代女性の美容意識をあげるようなSNS映えする空間にして、トレーニング機材の色・フロアタイルも特別に発注しました。

実は、ジム単体で利益を出すつもりはないんです。美容室に通うお客さまへの、“付加価値”。「ORO会員」は月額5000円、「グランドVIP(店販抜きの技術料のみで年間18万円以上使うお客さま)」は月額無料でジムが使えます。ライフスタイルビューティーという視点で、“OROに通う理由”をつくっておくことが、失客防止の大きな武器になるからです。

現在はジム会員の99%が、OROのサロンのお客さま。美容室は1階、ジムは5階と、同じビルにあります。お客さまがジムに通うときに、美容室も目にするので、美容室の来店周期も短くなっていますね。

美容師さんが、ジムトレーナーにもなる構想があるとか?

今、緑地公園店の店長をしている西浦の成長があったことで、ジムをオープンしました。西浦とは、彼がアシスタント時代から、一緒にジムでトレーニングをしていて。彼は、月300万円以上の売上があるスーパープレイヤー。その先のキャリアとして、「美容師で最低、月500万円の売上を目指す」「講師キャリアを高める」に加えて、「パーソナルトレーナーになってトータルビューティーをプロデュースする」というキャリアの選択肢もつくりたかった。現在は「低価格・トレーナーなし」のフィットネスジムですが、パーソナルトレーナーをつけることになったら、高単価にしようかと。西浦は、美容室の店長として週4日、ジムトレーナーとして週1日というスタイルで働く予定です。美容師がトレーナーになれば、「小顔にみせたいなら、ジムで顎の筋肉から鍛える。そのうえで髪形を変える」といったように、アドバイスの幅が広がりますよね。

ただ、きちんと実績を出してからでないと、トレーナーデビューはさせません。それを仕事にする以上は、趣味じゃないので。まずは、ボディビルの大会で賞を獲ってからですね。2020年の11月、ある大会に出たのですが、そのときは何も獲れなかった。大会に出ている方の多くが“プロ”としてやっているのだから、そんなに甘くはない。コロナで大会の中止が続いて、今は大会待ちの状態ではあるのですが…。トロフィーを持ってこれれば、すぐにトレーナーデビューして、美容師との二足のわらじで活躍できるようになってほしいです。

がんばって結果を出してきたスタッフが、「やりたい」と言った夢を叶えるのが僕の方針。「ORO New York店」の海外出店も、スタッフの成長に合わせてオープンしたものです。

  • 美容師にくわえてトレーナーを目指す西浦 翼さん(写真・右)。さらに、今年から美容学校で健康・インナービューティーの非常勤講師も務める(写真・左は伊藤さん)

  • 2020年1月オープンの「ORO New York店」。西宮店の店長をしていた伊藤 裕哉さんが渡米し、店舗運営をしている

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